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胆嚢ポリープ

腹痛倦怠感・だるさ吐き気・嘔吐 内科の病気

疾患の概要

胆嚢ポリープとは、胆嚢の内壁にできる隆起性の病変で、胆嚢内に突出した小さな腫瘤の総称です。
胆嚢は肝臓の下に位置し、胆汁を一時的に蓄える働きを持つ臓器ですが、胆嚢ポリープはこの胆嚢内壁に形成され、超音波検査などで偶然発見されることが多い疾患です。
通常は無症状で、健康診断や人間ドック、腹部エコーなどの際に見つかります。

胆嚢ポリープは大きく分けて「真性ポリープ」と「仮性ポリープ」に分類されます。
真性ポリープは胆嚢の粘膜から発生する腫瘍性病変で、稀ではあるもののがん化の可能性を含みます。
一方、仮性ポリープはコレステロールや炎症性変化などによる良性病変で、がん化することはほとんどありません。
全体としては、胆嚢ポリープの大部分は仮性ポリープであり、がん化のリスクは高くないと考えられています。

ただし、ポリープの大きさが10mmを超える場合や、短期間で急速に大きくなる場合、基部が幅広い場合には、がん化の可能性を否定できないため、注意深い経過観察や外科的切除が検討されます。
特に胆嚢がんの発症リスクが高いとされる高齢者や、胆石症などの合併症がある場合には、より慎重な対応が求められます。

近年では、超音波検査の精度向上により、胆嚢ポリープの早期発見率が高まり、より多くの症例が診断されるようになりました。
特に5mmを超えるポリープに対しては、定期的なエコー検査で大きさや形状、内部構造の変化を追跡することが推奨されています。
また、造影超音波やCT、MRIなどの画像診断を組み合わせて評価することで、がんとの鑑別精度を高めることも重要です。

胆嚢ポリープの治療方針は、症状の有無、ポリープの大きさや形態、患者の年齢や合併症の有無などを総合的に考慮して決定されます。
10mm未満で形状に変化がないポリープであれば、6ヶ月〜1年ごとのエコー検査で経過観察するのが一般的です。
一方で、大きさや形に不整が見られる場合、あるいは家族歴などから胆嚢がんのリスクが高いと判断される場合には、予防的に胆嚢摘出術が選択されることもあります。

胆嚢ポリープは多くの場合、無症状で経過し、特別な治療を要さないことも多いですが、がんとの鑑別が難しい例もあり、発見後は定期的なフォローアップが重要です。
胆嚢がんは進行が速く、早期発見が難しいがんのひとつであるため、ポリープの性状を的確に評価し、適切な管理を行うことが肝要です。
医療機関での正確な診断と、必要に応じた手術の判断が、将来のリスクを軽減するうえで重要です。

症状

胆嚢ポリープは、ほとんどの症例で無症状です。
多くの場合、健診や他の目的で行われた腹部超音波検査により偶然発見されます。
そのため、発見時には自覚症状が全くないことがほとんどで、本人も病変があることを知らないまま経過しているケースが多く見られます。

まれに、右上腹部の不快感や鈍痛、食後の膨満感、吐き気などの軽度の消化器症状を訴えることがありますが、これらは胆嚢ポリープ自体による症状とは断定しがたく、胆石や胆嚢炎などの他の胆嚢疾患が原因となっていることもあります。
症状とポリープとの因果関係を評価する際には、慎重な診察と画像検査が必要です。

胆嚢ポリープが大きくなると、胆嚢の機能に影響を与える可能性があります。
特にポリープが胆管の流れを妨げるような位置にある場合には、胆汁の流出障害を引き起こし、黄疸や胆嚢炎を誘発することもありますが、こうしたケースはごく稀です。

症状があるかどうかは、治療方針において重要な要素となります。
無症状で小さなポリープであれば、定期的な超音波検査による経過観察が基本となりますが、症状が明らかである場合や、ポリープの大きさが増してきた場合には、手術を含めた治療方針の見直しが必要になります。

原因

胆嚢ポリープの原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。
最も一般的な仮性ポリープの一種であるコレステロールポリープは、胆汁中のコレステロールが胆嚢粘膜に沈着し、粘膜が隆起することで形成されます。
脂質異常症や肥満、高脂肪食を常食としている人に多く見られる傾向があります。

炎症性ポリープは、胆嚢の慢性炎症に伴って粘膜が過形成を起こしたもので、胆嚢炎や胆石の既往がある人に多く見られます。
真性ポリープは腺腫や乳頭腫などが含まれ、腫瘍性病変であるため、悪性化するリスクを一定程度伴っています。

胆嚢ポリープの発生に関しては、加齢や遺伝的素因、生活習慣、脂質代謝異常、胆嚢運動機能の低下なども関連するとされています。
コレステロールの摂取過多や胆汁の停滞によって、胆嚢内の環境が変化し、粘膜が刺激を受けることで隆起性病変が形成される可能性があります。

また、胆嚢がんの危険因子として知られるPSC(原発性硬化性胆管炎)や家族歴を有する患者では、胆嚢ポリープが悪性に移行する可能性が高まるとの報告もあり、こうした背景を有する患者では慎重な観察が求められます。
原因が明確でないこともありますが、画像診断や問診によって背景を評価し、適切な管理方針を立てることが重要です。

治療

胆嚢ポリープの治療方針は、ポリープの性状、大きさ、経過、症状の有無などを総合的に判断して決定されます。
大部分のポリープは良性であり、特に5mm以下のものについては、がん化のリスクが非常に低いため、定期的な経過観察が基本となります。

経過観察では、腹部超音波検査を3〜6か月ごとに実施し、ポリープの大きさや形状の変化、数の増減などを確認します。
1cm(10mm)を超えるポリープや、短期間での急速な増大、広い基部を持つポリープ、血流のある病変などが認められた場合には、悪性の可能性があるため、胆嚢摘出手術(胆嚢摘出術)が勧められることがあります。

腹腔鏡下胆嚢摘出術は、安全性が高く、術後の回復も比較的早いため、手術適応となった場合には標準的な治療とされています。
特に胆嚢がんのリスクが高い年齢層や、胆石症の合併がある場合には、予防的手術としての意義もあります。

薬物治療は、胆嚢ポリープそのものを消失させる効果は認められておらず、基本的には行われません。
ただし、胆汁の流れを改善する薬や、脂質異常症の治療薬が併用されることはあります。
ポリープが良性であるか、悪性の可能性があるかを的確に見極め、患者ごとに最適な治療選択を行うことが求められます。

早期発見のポイント

胆嚢ポリープは自覚症状がないことが多く、健診などの画像検査で偶然発見されることが一般的です。
そのため、40歳以上で腹部エコーを定期的に受けている人ほど早期に発見される傾向にあります。
とくに、胆嚢がんの家族歴がある人や、脂質異常症・胆石などの既往がある人では、検査による早期発見の意義が大きくなります。

超音波検査は痛みを伴わず、身体への負担も少ないため、スクリーニングに非常に適した方法です。
定期健診の際に胆嚢の状態を確認することで、早期の段階でポリープを発見することができます。
検査の結果、ポリープが見つかった場合は、サイズや形状を記録しておくことが、将来的な経過観察において重要な指標となります。

ポリープの大きさや形が変化していないかを把握することが、良性か悪性かを判断するうえで有用です。
特に、半年以内に明らかな増大を示す場合や、複数のポリープが急に現れた場合には、より精密な検査や手術の検討が必要となります。

自己判断で放置せず、医師の指示に従って定期的な検査を受けることで、悪性化の兆候を早期に捉えることが可能となります。
画像検査を活用し、無症状のうちに適切な対応を行うことが、胆嚢ポリープ管理の基本です。

予防

胆嚢ポリープそのものを完全に予防することは難しいとされていますが、生活習慣の見直しによってリスクを軽減することは可能です。特に、コレステロールポリープと関連の深い脂質異常症や肥満に対しては、食事と運動を中心とした生活習慣改善が有効です。

食事面では、動物性脂肪の多い食品を控え、野菜や果物、魚介類、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取することが推奨されます。過剰なアルコール摂取や糖分の多い飲料も控え、規則正しい食生活を心がけることが大切です。

適度な運動も胆汁の流れを促進し、胆嚢内での胆汁停滞を防ぐため、ウォーキングや軽い有酸素運動などを日常に取り入れることが勧められます。喫煙習慣も生活習慣病の一因となるため、禁煙も予防の一環として有効です。

また、胆石や胆嚢炎などの既往がある場合は、胆嚢ポリープの合併に注意が必要であり、定期的なフォローアップが推奨されます。生活習慣を整えることは、胆嚢ポリープだけでなく、生活習慣病全般の予防にもつながる重要な取り組みです。

リスクの有無に関わらず、体調に異変を感じたら早めに受診し、医師に相談しましょう。