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大腸ポリープ

便秘血便・黒色便 大腸・十二指腸の病気

疾患の概要

大腸ポリープとは、大腸の内側の粘膜の一部がイボ状に盛り上がった「できもの」の総称です。
組織学的には腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに大きく分けられます。
腫瘍性ポリープには良性の腺腫と悪性腫瘍である大腸がんが含まれ、非腫瘍性ポリープには炎症のあとにできるポリープや過形成性ポリープなどがあります。
大腸がんが発生する主な経路は、この良性腫瘍である腺腫が徐々に悪性化してがん化するパターンだと考えられています。
腺腫が大きく成長すると一部にがん細胞を含むことが多く、放置すればいずれ大腸がんに進展する可能性があります。
そのため大腸内視鏡検査で腺腫が見つかった場合は早めに切除することが推奨されます。
実際に、内視鏡で腺腫を切除することで将来の大腸がん罹患率・死亡率を大きく下げられることが証明されています。
一方で、大腸ポリープの中には過形成性ポリープのようにがん化しないタイプもあり、症状もなく健康に影響を及ぼさない場合は経過観察とされることもあります。
ただし内視鏡検査だけで腫瘍性か非腫瘍性かを完全に見分けることは難しいため、基本的には発見時に生検や切除で詳しく調べるのが一般的です。
なお、ごく稀ではありますが遺伝性のポリープが多発する体質も存在します。
例えば家族性大腸腺腫症という遺伝性疾患では10代から大腸に無数のポリープが生じ、適切な治療をしなければ中年までにほぼ確実に大腸がんになるといわれています。
このような特殊な場合を除き、大腸ポリープは早期に発見・切除すれば大腸がんへの進行を防ぐことができる病変です。

症状

大腸ポリープは、自覚症状がないまま見つかることがほとんどです。
特に小さいポリープではほとんど無症状で経過するため、本人が存在に気づくことはまずありません。
そのため症状がない健康な段階で検診などを受け、大腸ポリープを早期に発見することが重要です。

一方、ポリープが大きく育つと周囲の組織に影響を及ぼし、症状が現れる場合もあります。
代表的な症状は便に血が混じることで、大腸ポリープが大きくなると便の通過時に表面が擦れて出血し、肉眼で分かる赤色便や、検査で指摘される便潜血として現れることがあります。
また、ゼリーのような粘液が便に付着する「粘液便」が出ることもあります。
これらの症状は大腸ポリープだけでなく大腸がんや炎症性腸疾患でも起こり得ますが、いずれにせよ見られた場合は消化器科受診が推奨されます。

さらに稀なケースですが、非常に大きなポリープが肛門近くにできた場合、腸管の通り道をふさいで腸閉塞を引き起こしたり、ポリープが肛門から外へ飛び出してしまったりすることもあります。
しかしこのようなケースは例外的であり、繰り返しになりますが一般的には大腸ポリープ自体は症状に乏しく、自覚できないまま存在していることがほとんどです。

原因

大腸ポリープの発生には年齢や遺伝的要因、生活習慣など複数の要因が関与します。

加齢は大腸ポリープ・大腸がんの最大の危険因子であり、発症率は50歳以上で特に高まります。

また家族歴も重要な原因の一つです。
両親や兄弟姉妹など近親者に大腸ポリープや大腸がんの方がいる場合、同じくポリープができたり大腸がんになったりするリスクが高く、統計的にはリスクが通常の約3倍になるとも報告されています。
遺伝要因としては家族性大腸腺腫症のほか、リンチ症候群など大腸がん素因となる疾患が知られていますが、これら遺伝性疾患は大腸ポリープ全体から見れば稀です。

多くの大腸ポリープは生活習慣や食生活の欧米化が背景要因と考えられています。
具体的には高カロリー・高脂肪の食事や肉食中心の食生活は、大腸ポリープおよび大腸がんの発生リスクを高めると指摘されています。
逆に食物繊維や野菜を多く摂る食生活の人ではリスクが低い傾向が報告されています。

そのほか、過度の飲酒や喫煙、運動不足や肥満も大腸ポリープのリスク要因です。

これらの生活習慣は大腸粘膜の細胞に慢性的な負担や炎症を与え、遺伝子に変異を起こしやすくすることでポリープ発生につながると考えられています。
ただし「○○を食べたから必ずポリープができる」というような直接的因果関係が明確になっているわけではなく、あくまで統計的なリスク要因です。
したがって生活習慣を改善することで大腸ポリープのリスクを下げられる可能性がありますが、加齢や遺伝といった避けられない要因もあるため、完全に発生を防ぐことは難しいのが現状です。

治療

大腸ポリープの主な治療法は内視鏡による切除です。
大腸内視鏡検査でポリープが発見された場合、その場で追加の処置を行って切除することが可能です。
ポリープの形状や大きさに応じていくつかの切除法があり、一般的にはスネアというワイヤーでポリープを首から締め切除するポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術、内視鏡的粘膜下層剥離術などが用いられます。
小さな有茎性ポリープであればポリペクトミーで数秒のうちに切除できます。
平坦な病変や大きなポリープは内視鏡的粘膜切除術で一括切除し、さらに大きいものや広範囲の病変には内視鏡的粘膜下層剥離術を用いて丁寧に剥離切除するなど、ポリープの性状に応じて適切な治療法が選ばれます。
切除したポリープ組織は顕微鏡で病理検査を行い、がんの有無やポリープの種類を診断します。
病理検査の結果、早期の大腸がんが見つかった場合でも、がんが粘膜内に留まっていれば内視鏡切除だけで治癒することが期待できます。
内視鏡で完全に切除できないような進行したがんが含まれていた場合や、リンパ節への転移が疑われる場合には、追加で外科的手術を行って根治を目指します。
しかしそのようなケースは少数であり、ほとんどの大腸ポリープは内視鏡治療のみで完結します。
内視鏡によるポリープ切除は患者さんへの負担が小さい安全な治療ですが、まれに合併症が起こることがあります。
代表的な合併症は出血と穿孔です。
ポリープ切除後の出血は数%程度の頻度で起こり得ますが、内視鏡で止血できる場合がほとんどです。
腸に小さな穴があいてしまう穿孔はごく稀ですが、この場合には緊急手術が必要になることもあります。
こうしたリスクはありますが、総合的に見て大腸ポリープを放置することによる大腸がんのリスクの方がはるかに大きいため、専門医と相談のうえ適切なタイミングで切除することが勧められます。

早期発見のポイント

大腸ポリープは自覚症状が乏しいため、症状が出てからではなく症状がないうちに検査を受けることが早期発見の鍵になります。
日本では40歳以上の方を対象に大腸がん検診を年1回受けることが推奨されています。
検診として広く行われている便潜血検査は、2日分の便中の微量な血液を調べる検査で、ポリープやがんからの出血を拾い上げることができます。
便潜血検査で異常ありとなった場合は精密検査が必要です。
精密検査としては大腸内視鏡検査が一般的で、直ちに受診するようにしてください。
内視鏡検査では大腸ポリープの有無や大きさ・数を直接確認でき、その場で治療まで行える利点があります。
以下に大腸ポリープを早期発見するためのポイントをまとめます。

定期的に検診を受ける

40歳を過ぎたら自治体や職場の大腸がん検診を毎年欠かさず受けましょう。
症状が無くても検診で早期のポリープやがんを発見できる可能性があります。

精密検査を怠らない

検診の結果「要精密検査」と言われた場合や、血便・下血など気になる症状がある場合は、放置せず必ず大腸内視鏡による精密検査を受けてください。
大腸がんは早期では症状が出ないことも多いため、「症状がないから大丈夫」と自己判断せず医師の指示に従うことが大切です。

家族歴がある場合は要注意

両親や兄弟姉妹など近親者に大腸ポリープや大腸がんになった方がいる場合、そうでない人に比べ大腸がんになるリスクが高いことがわかっています。
そのような方は若いうちから内視鏡検査を含めた定期的なチェックを医師と相談して検討しましょう。
場合によっては40歳より前に初回の大腸内視鏡検査を行うこともあります。

過去にポリープを切除した場合

一度大腸ポリープが見つかり切除を受けた方は、経過監視のための定期検査が勧められます。
切除したポリープの数や大きさにもよりますが、多くの場合は1~3年後に再度の大腸内視鏡検査を行い、その後も医師の指示する間隔で内視鏡検査を続けます。
小さな良性ポリープが1~2個見つかった程度であれば次回検査は5年後でもよいとされています。
このように適切な間隔で検査を継続することで、新たなポリープの発生や再発も早期に発見できます。

予防

大腸ポリープを予防するためには生活習慣の改善が重要です。
遺伝や加齢といった要因は避けられませんが、日頃の心がけでリスクを減らせる可能性があります。

バランスの良い食事を心がける

肉類中心の食生活は避け、野菜や果物、食物繊維を豊富に含む食品を積極的に摂りましょう。
高脂肪・高カロリー食は大腸への負担を増やすため控えめにし、和食中心のバランスの取れた食事を意識します。

適度な運動習慣を持つ

定期的に体を動かすことは大腸の蠕動運動を促し、腸内環境の改善につながります。
週に数回の適度な運動を継続する人は、大腸ポリープや大腸がんのリスクが低いことが明らかになっています。

飲酒・喫煙を控える

アルコールの過剰摂取は大腸ポリープ発生の明確な危険因子であり、喫煙もリスクを高めます。
日本酒やビール換算で1日あたり2合以上の飲酒をされている方は、量を減らすか禁酒を検討してください。
また喫煙者はこれを機に禁煙することを強くお勧めします。

適正体重の維持

肥満も大腸ポリープのリスク因子とされています。
適正体重を維持することで腸内への負担を減らし、生活習慣病全般の予防にもつながります。
特に内臓脂肪型肥満の方は食事と運動で減量に取り組みましょう。

以上のような生活習慣の改善によってポリープそのものの発生予防に努めつつ、検診受診による早期発見・早期治療による大腸がん予防も並行することが大切です。
大腸ポリープは適切に対処すれば恐れる必要のない病変です。
日々の生活と定期検査でリスク管理を行い、将来の大腸がん発症をしっかり防ぎましょう。

リスクの有無に関わらず、体調に異変を感じたら早めに受診し、医師に相談しましょう。