大阪府大阪市東住吉区駒川5丁目23−18
針中野医療ビル(針中野クリニックモール) 2F

病気や症状についてわかりやすく伝える
医学情報サイト

胆石症

腹痛吐き気・嘔吐悪寒発熱・高熱食欲不振黄疸 内科の病気

疾患の概要

胆石症とは、胆のうまたは胆管内に胆石と呼ばれる固形物が形成される病気です。
胆のうは肝臓の下に位置する小さな袋状の臓器で、肝臓でつくられた胆汁を一時的に蓄える役割を果たしています。
胆汁は脂肪の消化を助ける重要な液体ですが、この胆汁の成分が何らかの理由で結晶化し、胆のうや胆管内に石となって蓄積されると胆石が形成されます。
胆石が存在しているだけで症状を伴わない場合も多く、これを無症候性胆石と呼びます。

一方、胆石が胆のうの出口や胆管に詰まってしまうと、強い右上腹部痛や背中の痛み、発熱、吐き気、黄疸などの症状が現れることがあり、これを発作性胆石症または急性胆嚢炎と呼ぶこともあります。
特に食後に胆のうが収縮しようとした際、胆石が出口に引っかかることで激しい痛みが生じることがあります。

胆石の成分にはいくつかの種類があり、最も多いのはコレステロールを主成分とするコレステロール胆石です。
このほか、ビリルビンカルシウムからなる色素胆石や、感染によって形成される混合型胆石などがあります。
胆石がどこにできるかによっても分類され、胆のうにできるものを胆のう結石、胆管にできるものを総胆管結石と呼びます。

胆石症は中高年以降の女性に多く見られ、肥満、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病との関連も指摘されています。
また、急激なダイエットや長期の絶食も胆石形成のリスク因子とされています。
近年では、健康診断や人間ドックでの腹部エコー検査によって無症候性胆石が偶然発見されることも増えています。

胆石は長年にわたって無症状のまま経過することもあり、すべての胆石が治療対象となるわけではありません。
無症候性胆石が見つかった場合には、石の大きさや数、位置、合併症の有無、患者の年齢や全身状態などを考慮して、経過観察または治療の方針が決定されます。
症状のない胆石でも、総胆管に移動して閉塞性黄疸や胆管炎、膵炎を引き起こすリスクがあるため、定期的な経過観察が推奨される場合もあります。

また、胆石の発症には遺伝的素因や民族的背景も関与しており、欧米諸国では日本よりも胆石症の有病率が高いことが知られています。
今後、食生活の欧米化が進むことで、日本における胆石症の発症率もさらに増加する可能性があると考えられています。

症状

胆石症の症状は、石の大きさや数、場所によって異なります。
無症候性胆石では症状は全くなく、自覚のないまま経過することが多く、定期健診などで偶然見つかることがあります。
無症候性胆石はすぐに治療の対象とはならず、多くは経過観察とされます。

一方で、胆石が胆のうや胆管に詰まると、胆道系に急激な圧力がかかり、強い右上腹部痛が出現します。
この痛みはいわゆる「疝痛発作」と呼ばれ、突然始まり、数分から数時間続くことがあります。
痛みは右肩や背中に放散することもあり、患者は脂汗をかくほどの激痛を訴えることもあります。
中には救急車で搬送されるほどの強い痛みが出ることもあり、発作時には早急な診察が勧められます。

胆石が原因で胆のうに炎症が起こると、急性胆嚢炎となり、持続的な痛みに加えて発熱、悪寒、吐き気、嘔吐がみられるようになります。
さらに、胆石が胆管にまで及ぶと、黄疸や皮膚・眼球結膜の黄色化、尿の濃染、便の色の変化などが現れることがあります。
これは胆汁の流れが妨げられることで起こる症状です。

また、胆石が原因で膵臓まで炎症が波及することがあり、この状態は胆石性膵炎と呼ばれ、非常に重篤となる場合があります。
腹痛がみぞおちに及び、背中に抜けるような痛みを伴うのが特徴で、緊急の医療処置が必要です。

胆石発作の多くは脂っこい食事のあとに誘発されることが多く、食事内容と症状との関連性がみられることもあります。
症状が一度で収まる場合もありますが、繰り返すようであれば根治的な治療を検討する必要があります。

原因

胆石症の原因は、胆汁の成分バランスが崩れ、過剰なコレステロールやビリルビン、カルシウムなどが析出し、結晶化して石になることです。
胆石の形成にはいくつかの要因が複合的に関与しており、生活習慣、体質、年齢、性別なども関係します。

最も一般的なコレステロール胆石は、胆汁中のコレステロール濃度が高くなったときに形成されやすくなります。
胆汁の流れが悪くなる胆汁うっ滞や、胆のうの収縮力の低下も、胆石ができる背景となります。
長時間の絶食や急激なダイエット、妊娠中、経口避妊薬の使用などもリスクを高めるとされています。

ビリルビン系の色素胆石は、肝機能障害や溶血性貧血、慢性感染症などでビリルビンの代謝が亢進している場合に形成されやすくなります。
日本やアジア諸国ではこのタイプの胆石も比較的多く、特に高齢者では胆管にできる色素胆石の割合が高くなります。

胆石の形成には遺伝的な要因も関係していると考えられており、家族に胆石症の既往がある場合には、同様のリスクを抱えている可能性があります。
また、糖尿病、高脂血症、肥満といった生活習慣病のある人は、コレステロール代謝の異常から胆石ができやすいとされています。

食事の影響も見逃せません。
高脂肪・高コレステロールの食生活は胆汁の性状を変化させ、胆石を形成しやすい胆汁をつくる原因になります。
一方で、極端なカロリー制限や不規則な食生活も、胆汁の排出を妨げて胆のうに胆汁が停滞しやすくなります。

治療

胆石症の治療は、症状の有無や胆石の大きさ、数、位置、合併症の有無などを総合的に評価して決定されます。
無症候性胆石の場合、特に症状がなければ経過観察が基本となり、定期的な腹部超音波検査などで石の変化を確認しながら対応します。

一方、症状のある胆石や、繰り返し発作を起こす場合、急性胆嚢炎を合併している場合などには、胆のう摘出術が検討されます。
現在では、腹腔鏡下胆のう摘出術が主流となっており、体への負担が少なく、術後の回復も比較的早いとされています。
胆管結石がある場合には、内視鏡的胆道ドレナージや結石除去術が行われることもあります。

薬物療法としては、胆石溶解薬が用いられることがあります。
ウルソデオキシコール酸(UDCA)は、コレステロール胆石を溶かす作用がありますが、すべての胆石に効果があるわけではなく、小さくて比較的柔らかい胆石が対象となります。
また、薬剤による治療は長期間の服用が必要であり、再発するリスクもあるため、慎重に適応を検討する必要があります。

食事療法も重要です。
脂肪分の多い食事を控えることで胆のうの過剰な収縮を抑え、発作の予防につながります。
暴飲暴食を避け、規則正しい食事を心がけることも、胆石症の症状管理に有効とされています。
発作時には絶食や点滴管理が必要になることもあります。

早期発見のポイント

胆石症は無症状であることも多いため、早期発見には定期的な健康診断が有効です。
特に40歳以上の人や、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病を持っている人、肥満傾向のある人では、腹部エコーによる胆のうのチェックが推奨されます。
腹部超音波検査は痛みもなく、簡便に実施できるため、胆石のスクリーニングには非常に適した検査法です。

胆石による症状は食後に出現することが多く、「脂っこいものを食べたあとに右上腹部が痛くなる」といったエピソードがある場合は要注意です。
また、夜間や早朝に発作的な腹痛で目が覚めるという場合も、胆石症の可能性があるため、症状を見逃さないようにすることが大切です。

家族に胆石症の既往がある場合、自分も同様のリスクを抱えている可能性がありますので、自覚症状の有無にかかわらず、定期的な検査を受けることが推奨されます。
胆石が原因で胆嚢炎や膵炎を起こすこともあるため、放置せずに医療機関で相談することが重要です。

特に繰り返す腹痛がある場合には、早めに専門の医師による診察と検査を受け、適切な診断と治療を受けることが、合併症の予防にもつながります。
症状が落ち着いている間でも、病気が進行している可能性があるため注意が必要です。

予防

胆石症を予防するには、日々の生活習慣の見直しが大切です。
まず、バランスのとれた食生活を心がけることが基本となります。
脂肪分の多い食事を避け、野菜、果物、食物繊維を豊富に含む食品を取り入れることで、コレステロール代謝を整えることが期待できます。

規則正しい食事時間を守り、極端な食事制限や急激なダイエットを避けることも重要です。
長時間の絶食状態は胆汁の排出を妨げ、胆石形成のリスクを高めるため、1日3食を適量ずつ摂ることが推奨されます。
また、水分をしっかりとることも、胆汁の濃縮を防ぐうえで有効です。

適度な運動も予防には効果的です。
ウォーキングや軽い有酸素運動を日常的に取り入れることで、胆のうの働きや代謝機能を保つことができます。
肥満の改善にもつながるため、生活全体を見直すよいきっかけとなります。

さらに、定期的な健康診断を受けることで、無症候性胆石の早期発見にもつながります。
胆石があることがわかれば、食事や生活習慣をより積極的に整える動機づけにもなります。
日々の積み重ねが、胆石症の予防において非常に重要です。

リスクの有無に関わらず、体調に異変を感じたら早めに受診し、医師に相談しましょう。