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C型肝炎

倦怠感・だるさ食欲不振黄疸 大腸・十二指腸の病気

疾患の概要

C型肝炎は、C型肝炎ウイルスへの感染によって肝臓に炎症が起こる病気です。
急性感染と慢性感染の両方がありますが、感染した人のうち約30%は急性肝炎の段階でウイルスが体内から排除されて自然に治癒する一方、残る約70%は感染が持続して慢性肝炎へ移行すると報告されています。
慢性化したC型肝炎は、放置すれば数年から数十年のうちに肝硬変や肝細胞がんへ進行しうる怖い病気です。

世界では約5,800万人もの人々がC型肝炎ウイルスに慢性感染していると推定されており、日本国内でも約100万人の感染者がいると考えられています。
国内の感染者には、自身の感染に気づいておらず未受診のままになっている人も多いのが現状です。
C型肝炎は日本における慢性肝炎・肝硬変・肝がん症例の約60%の原因を占めており、現在でも年間約2万5千人が肝がんで命を落としています。
こうした状況から、C型肝炎について正しい知識を広め、早期発見・治療につなげることが重要です。
近年は抗ウイルス薬の開発によりC型肝炎ウイルスを体内から排除して完治させることが可能になりつつあり、C型肝炎は「治せる病気」へと変わりつつあります。
ただし、治療を受けていない人が今も多くいるため、社会全体としての重要な課題となっています。

症状

C型肝炎の症状は、感染後の経過や病状の進み具合によって異なります。

急性C型肝炎の場合、症状が出ないことが多く、自分では気づかないまま過ごしてしまうことがほとんどです。
症状が現れる場合でも、発熱、全身の倦怠感、食欲不振、吐き気、腹痛、尿の色調の濃化、皮膚や白目の黄疸といった、他のウイルス性肝炎に共通する症状がみられる程度です。
急性肝炎の段階で体内のウイルスが免疫によって排除されれば自然に治ることもありますが、慢性C型肝炎へ移行した場合でも、自覚症状が出ない人がほとんどです。
ときに「なんとなく疲れやすい」「食欲がわかない」などの漠然とした症状がみられることもありますが、これらは他の病気でも見られる一般的なもので、C型肝炎に特有の症状とは言えません。
自覚症状に乏しいため、健康診断の血液検査で初めてC型肝炎ウイルス感染を指摘されるケースや、症状がないまま肝硬変に進行した後になってようやく見つかるケースも少なくありません。

慢性肝炎の状態がさらに進行して肝硬変になると、肝臓の機能低下による症状が現れ始めます。
例えば、皮膚や眼球結膜が黄色くなる黄疸、手足や顔のむくみ、お腹に水が溜まって張ってくる腹水、血液が固まりにくくなることによる鼻血や出血傾向などが代表的です。
ただし肝硬変の初期では無症状のことも多く、症状が出る頃にはかなり病気が進んでいる場合があります。
また、C型肝炎に関連して発生する肝細胞がんも、早期には症状が出にくい病気です。
がんが大きくなってからようやくみぞおち辺りの違和感や痛みで気づくこともありますが、その頃には病変が進行していることが多いのが実情です。
したがって、C型肝炎ウイルスに感染している方は症状の有無にかかわらず定期的に医療機関で経過観察を受けることが大切です。

原因

C型肝炎の原因は、C型肝炎ウイルスへの感染です。
C型肝炎ウイルスは、血液を通じて感染するウイルスで、人から人へは主に感染者の血液が他の人の体に入ることでうつります。
具体的な感染経路としては、以下のようなものが知られています。

輸血や血液製剤による感染

ウイルス検査が不十分だった時代の輸血や血液製剤の投与によって感染するケースがかつて多く報告されました。
現在使用されている輸血用血液や製剤は厳重に検査されているため安全ですが、それ以前の時代に輸血等を受けた方はC型肝炎ウイルスに感染している可能性があります。

注射針の共用による感染

麻薬や覚醒剤などの注射薬物乱用時に他人と注射針や注射器を使い回した場合、感染者の血液が付着した針を介してC型肝炎ウイルスが体内に入るリスクがあります。
医療行為における注射針刺し事故でもごくまれに感染が起こる可能性があります。

不衛生な器具の使用

入れ墨やピアスの施術を不適切な消毒状態で行った場合、皮膚を介して他人の血液が混入しウイルスがうつる可能性があります。
使い回しの鍼による鍼治療や、衛生管理の行き届いていない美容医療処置でも同様のリスクがあります。

母子感染

C型肝炎ウイルスは胎盤を通じて胎児に移行することはほとんどありませんが、出産時に産道で母体の血液を浴びることで新生児に感染することがあります。
母子感染が起こる確率は5~10%程度とされ、母親のウイルス量が多い場合にやや高くなります。
一方、母乳を介した感染は起こらないと考えられています。

性行為による感染

性交時に相手の血液や体液に触れることでC型肝炎ウイルスがうつる可能性があります。
ただし通常の男女間の性行為で感染するリスクは低く、コンドームを使用しない長年の夫婦間でも感染例はまれです。
一方で、不特定多数との性的接触がある場合や、出血を伴う激しい性交渉、HIVなど他の性感染症に同時に感染している場合にはC型肝炎ウイルス感染のリスクが上昇します。

このように、C型肝炎ウイルスは主に血液を通じて感染します。
一方で、日常生活の中での普通のふれあいでうつることはありません。
たとえば、握手やハグ、キス、食器の共用、入浴、咳やくしゃみによる飛沫などでは感染しないことが分かっています。
このため、家族や職場の同僚がC型肝炎ウイルスに感染していても過度に恐れる必要はなく、感染を理由にした差別や偏見は厳に慎むべきです。
実際にC型肝炎ウイルス陽性の方と生活する際には、歯ブラシや髭剃りカミソリの共有は避ける、けがをして出血した場合は速やかに止血・消毒する等、基本的な注意を払えば日常生活で感染が広がる心配はほとんどありません。

治療

C型肝炎の治療は、体内からC型肝炎ウイルスを排除して肝炎そのものを治癒させることを目標とします。

かつてはインターフェロンという注射薬とリバビリンという飲み薬を組み合わせ、週1回の皮下注射を半年から1年間続ける治療が標準的でした。
しかし副作用が比較的強く、治療を完了してもウイルスが陰性化しない患者さんも少なくありませんでした。
近年、この状況は大きく変化し、C型肝炎ウイルスの増殖を直接阻害する経口抗ウイルス薬の登場により、インターフェロンを併用しない飲み薬だけの治療が主流となりました。
現在使用されている飲み薬の組み合わせによる治療は非常に効果が高く、治療完了後にウイルスが検出されなくなる確率は95%以上に及びます。
例えばC型肝炎ウイルスの遺伝子型に応じた2種類の抗ウイルス薬を1日1回服用する治療が一般的で、8週間から12週間の内服で完了するケースが多く、副作用も従来のインターフェロン療法に比べて軽度です。
年齢や肝臓の線維化の程度にかかわらず、多くの慢性C型肝炎患者さんでこの抗ウイルス薬治療の適応となり、高齢の方や軽度の肝硬変を合併している方でも治療が行えるようになっています。
ただし、進行した肝がんを合併している場合など病状によっては、まず肝がんの治療を優先するなど個別の判断が必要です。

抗ウイルス治療によってC型肝炎ウイルスが体内から排除できると、肝臓の炎症は鎮静化し、肝硬変や肝がんへの進行リスクは大幅に低下します。
実際、治療後にウイルス陰性の状態が持続すれば、経過中に肝がんが発症する確率は大きく減少します。
とはいえ、治療が遅れて肝硬変に至ってしまった患者さんでは、ウイルスが陰性化した後もゼロではないもののわずかながら肝がん発生の可能性が残るため、治療後も定期的な検査で経過観察を続けることが推奨されます。
特に高齢の方や線維化が進んでいる方では、治療後も超音波検査やCT検査等による定期的な肝臓チェックが重要です。

なお、慢性肝炎・肝硬変の患者さんには肝臓を守るための生活習慣改善も欠かせません。
アルコールの摂取は肝臓への負担を増やし肝がんのリスク因子にもなるため控えるべきです。

また、肝臓に良いとされるバランスのとれた食事や適度な休養を心がけ、併せて肥満や糖尿病の改善にも努めることが望ましいとされています。
肝硬変による症状に対しては塩分制限や利尿薬の使用、静脈瘤に対しては内視鏡治療といった対症療法が行われます。
さらに肝臓の働きが著しく低下した末期の状態では、肝移植が検討される場合もあります。
現在は薬によって肝炎を治せる可能性がとても高くなっているため、重い状態になる前にウイルスを取り除くことが現実的な目標となっています。

早期発見のポイント

C型肝炎は自覚症状があまりなく、気づかないうちに進行してしまうことがあります。
そのため、早く見つけるには血液検査でのチェックが欠かせません。
C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは、血液中のC型肝炎ウイルス抗体を調べる検査で確認できます。
この検査は数ミリリットルの採血で行える簡単なもので、健康診断の項目に含まれている場合もあります。
過去の健診結果を見直し、肝炎ウイルス検査を受けたことがない場合は、一度は受けてみることをおすすめします。
特に以下に該当する方は、早めに医療機関で検査を受けるよう心がけてください。

  • 1992年以前に輸血や大きな手術を受けたことがある。
  • 1994年以前にフィブリノゲン製剤(血液凝固因子製剤の一種)の投与を受けたことがある。
  • 1988年以前に血液凝固因子製剤(血友病治療などに用いる製剤)の投与を受けたことがある。
  • 家族にC型肝炎ウイルス陽性と言われた人がいる。
  • 過去に注射薬物の使用歴がある、または不衛生な器具で入れ墨・ピアスを行ったことがある。

上記に当てはまる方々はC型肝炎ウイルスに接触したリスクが高いため、できるだけ早期に検査を受けましょう。

C型肝炎ウイルス抗体検査で陽性と判定された場合、それは過去にC型肝炎ウイルスに感染していた、あるいは現在も感染している可能性があるということです。
ただし抗体陽性でも、すでに治癒してウイルスが体内からいなくなっている場合と、現在も感染が持続している場合の両方が考えられます。
そのため、抗体検査が陽性だった場合には追加の精密検査としてC型肝炎ウイルス遺伝子検査やC型肝炎ウイルスコア抗原検査を行い、現在ウイルスが体内にいるかどうかを確認します。
もしC型肝炎ウイルスの持続感染が判明した場合でも、現在では高い確率で治療が可能です。
早期に専門医療機関を受診し、適切な治療につなげることが重要です。


症状が出る前にC型肝炎を発見して治療を開始できれば、肝硬変や肝がんへの進行を未然に防ぐことができます。
日本では厚生労働省や自治体が中心となって肝炎ウイルス検診の受診勧奨を行っており、地域によっては40歳以上など一定の年齢を迎えた住民を対象に無料で肝炎ウイルス検査が提供される制度もあります。
こうした機会も積極的に活用し、自分の肝炎ウイルス感染の有無をチェックしておきましょう。
早期発見・早期治療が、健康を守ることはもちろん、周囲への感染拡大を防ぐことにもつながります。

予防

C型肝炎には現在有効なワクチンが存在しません。
そのため、感染を防ぐためにはウイルスに触れないよう注意することが何より大切です。
感染の可能性がある場面でしっかり対策をすれば、ほとんどの感染は防ぐことができます。
具体的な予防策のポイントを挙げます。

注射器や針の使い回しをしない

医療用の注射器具は原則使い捨てです。
他人が使用した注射針を使い回すことは絶対に避けましょう。
覚醒剤など薬物乱用の場面での注射器共同使用は重大な感染リスクとなります。
医療従事者は、注射や採血の際に適切な手袋の着用と針刺し事故防止策を徹底しなければなりません。

刺青・ピアス等は衛生管理の徹底された施設で行う

入れ墨やピアスの施術を希望する場合は、使い捨て器具やオートクレーブ滅菌された器具を使用している信頼できる施設を選びましょう。
不衛生な器具を使うとC型肝炎ウイルスに限らず様々な感染症のリスクがあります。

血液に触れる可能性のある場面での対策

怪我や鼻血など、人の血液に触れる可能性がある場合には使い捨て手袋を着用するなどし、他人の血液との直接接触を避けましょう。
医療現場では当たり前の対策ですが、家庭内でも家族の出血に対処する際は慎重に対応しましょう。

身の回りの血液媒介に注意

家庭内では、歯ブラシ・髭剃り用カミソリ・爪切りなど血液が付く恐れのある日用品は共用しないようにしましょう。
C型肝炎ウイルス感染者の血液が付いたガーゼや絆創膏はビニール袋に入れて廃棄するなど、他人が不用意に血液に触れないよう処置してください。

性的接触での配慮

一般的な性交渉でのC型肝炎ウイルス感染確率は高くありませんが、不特定多数との性行為や性風俗での接触がある場合はコンドームを正しく使用するなど安全策を講じてリスクを下げましょう。
特に相手にC型肝炎ウイルス感染が判明している場合や出血を伴う可能性がある場合にはより注意が必要です。

現在の日本において、新たにC型肝炎ウイルスに感染するケースの多くは上記のような予防可能な経路に限られています。
輸血や医療行為による感染は、供給される血液のスクリーニング検査が徹底された1990年代中頃以降ほとんど報告されなくなりました。
今後も一人ひとりが注意を払ってこれら感染リスクを避けていくことが大切です。
また、すでにC型肝炎ウイルスに感染している人が適切な治療を受けることも、感染予防の大切な取り組みのひとつです。
ウイルスが体からなくなれば、他の人にうつす心配がなくなるため、結果的に新たな感染者を減らすことにもつながります。
このような観点から、日本でも厚生労働省が掲げる肝炎対策基本指針のもと、肝炎ウイルス検査の普及・治療費助成制度の整備・啓発活動の強化などが行われています。

リスクの有無に関わらず、体調に異変を感じたら早めに受診し、医師に相談しましょう。