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アレルギー性鼻炎

かゆみ鼻水 内科の病気

疾患の概要

アレルギー性鼻炎は、アレルゲンと呼ばれる特定の物質に対して体の免疫機能が過剰に反応し、鼻の粘膜に炎症を起こすことで生じる病気です。アレルゲンが鼻の粘膜に接触すると、くしゃみ、透明な鼻水、鼻づまりなどの典型的なアレルギー症状が現れ、これらが日常生活に支障をきたすことがあります。特に朝方に強く症状が出る「モーニングアタック」と呼ばれる状態は、アレルギー性鼻炎の特徴のひとつです。

この疾患は「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」と「通年性アレルギー性鼻炎」に大別され、それぞれ原因や症状の現れ方に違いがあります。季節性アレルギー性鼻炎は、春や秋など特定の季節に限って発症する鼻のアレルギーで、スギやヒノキ、ブタクサ、ヨモギなどの植物の花粉が主な原因となります。特にスギ花粉は日本全国に広く分布しており、スギ花粉症の有病率は都市部を中心に40~50%に達するとされ、花粉症は「国民病」とも呼ばれるほど一般的な病気になっています。

一方、通年性アレルギー性鼻炎は、ハウスダスト、ダニ、カビの胞子、ペットの毛やフケなどがアレルゲンとなり、季節に関係なく1年を通じて症状が続くのが特徴です。とくに寝起きや掃除の直後など、アレルゲンが空気中に舞いやすい場面で症状が強く現れる傾向があります。目のかゆみや涙といった症状は花粉症ほど強く出ないこともありますが、慢性的な鼻づまりが続くと睡眠の質が低下したり、口呼吸になったりして健康への影響が出ることもあります。

近年、アレルギー性鼻炎は年々患者数が増加しており、その背景には都市化による大気汚染、住環境の密閉性向上、ライフスタイルや食生活の変化、過度な衛生環境などさまざまな要因が関与していると考えられています。アレルギー体質の家族歴がある方は特に発症しやすい傾向があり、幼少期から症状が出ることも少なくありません。

アレルギー性鼻炎は命に関わる病気ではありませんが、症状が長引くと学業や仕事に集中できなくなったり、睡眠障害を引き起こしたりすることがあります。さらに、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、中耳炎、気管支喘息などの合併症のリスクもあるため、軽症だからといって放置するのではなく、適切な診断と治療を受けることが生活の質(QOL)の維持にとって重要です。毎年同じ時期に症状が出る、もしくは年中鼻の不調が続いていると感じる場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診し、自分に合った対策を取ることが勧められます。

症状

アレルギー性鼻炎の三大症状は、くしゃみ、透明な鼻水、鼻づまりです。これに加えて鼻の奥のムズムズ感、かゆみが見られることもあり、目の症状(かゆみ、充血、涙)やのどのかゆみを伴うこともあります。季節性と通年性では症状のパターンに若干の違いがありますが、基本的にはどちらもこれらの症状が共通して現れます。

季節性アレルギー性鼻炎、いわゆる花粉症では、毎年決まった季節に症状が出るのが特徴です。特にスギ花粉が飛散する春先には、くしゃみや鼻水に加えて、目のかゆみや充血といった目の症状が強く出やすく、これらが同時に現れることで日常生活に大きな負担となります。東京都ではスギ花粉症の有病率が約50%とされ、「国民病」とも言われています。

通年性アレルギー性鼻炎では、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛などが原因であるため、季節に関係なく症状が持続します。特に朝起きた直後や掃除後、空気が舞いやすいタイミングで症状が悪化する傾向があります。目の症状は花粉症ほど強くないことが多いですが、鼻づまりが慢性的に続くことで、睡眠の質が低下したり、口呼吸によるのどの乾燥、いびきなどを引き起こすこともあります。

症状の程度には個人差があり、軽度であれば「少し鼻がムズムズする」程度ですが、重症になると鼻が完全につまって匂いが分からなくなったり、夜も眠れないほど強い不快感が続いたりします。副鼻腔の換気が悪くなることで、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)を合併するリスクもあるため、放置せず適切に対処することが大切です。

原因

アレルギー性鼻炎の原因は、アレルゲンと呼ばれる特定の物質に対する免疫反応です。季節性では、植物の花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサなど)が代表的なアレルゲンとなります。通年性では、ハウスダスト、ダニ、カビの胞子、ペットの毛やフケなどが主な原因です。

アレルゲンが鼻の粘膜に侵入すると、体はそれを異物と認識し、これを排除しようとしてIgE抗体という免疫物質を産生します。次に同じアレルゲンが体内に入ると、このIgE抗体が反応し、ヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることで、鼻水やくしゃみ、鼻づまりなどの症状が引き起こされます。この反応はアレルギー反応と呼ばれ、繰り返しアレルゲンに接触することで症状が悪化しやすくなります。

また、アレルゲンに対する反応は一つに限らないことが多く、たとえばハウスダストにアレルギーのある人が花粉にも反応を示す「複数感作」のケースも珍しくありません。このような場合、季節に関係なく一年を通して何らかの症状が出ることがあります。アレルギー体質は遺伝的要素も強く、家族にアレルギー疾患を持つ人がいると発症しやすい傾向にあります。

治療

アレルギー性鼻炎の治療は、症状の程度や生活環境に合わせて行います。

アレルゲンの除去・回避

アレルゲンの除去・回避は、もっとも基本的かつ重要な治療方針です。花粉が原因であれば、飛散時期の外出を控えたり、マスクや眼鏡を使用したりすることで曝露を減らすことができます。室内に花粉を持ち込まないよう、帰宅時には衣類を払う、うがい・洗顔をする、洗濯物を室内干しにするなどの対策も有効です。ハウスダストが原因であれば、こまめな掃除、布団の天日干し、防ダニカバーの活用などでアレルゲンの発生を抑えることができます。

薬物療法

薬物療法では、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド点鼻薬などがよく使われます。抗ヒスタミン薬はくしゃみや鼻水に、抗ロイコトリエン薬は鼻づまりに、ステロイド点鼻薬は鼻の炎症を抑える目的で使用されます。症状の強さや生活への影響に応じて、内服薬、点鼻薬、点眼薬などを組み合わせて使用します。これらの薬は即効性があり、症状のコントロールに有効ですが、アレルギーの体質そのものを治すものではありません。

アレルゲン免疫療法

アレルゲン免疫療法は、原因アレルゲンを少量ずつ体内に取り込み、体を慣らしていく根本的な治療法です。舌の下に薬剤を含む「舌下免疫療法」が現在主流で、スギ花粉とダニアレルギーに対して保険診療として認められています。効果が現れるまでに数か月を要し、治療は3〜5年と長期に及びますが、終了後も効果が持続することが多く、重症例では大きな改善が期待されます。

手術療法

手術療法は、薬では効果が十分でない重症例や、鼻の構造上の問題で慢性的に鼻づまりが続く人に対して行われます。代表的な手術には、下鼻甲介粘膜焼灼術や後鼻神経切断術などがあり、鼻粘膜の過敏な反応を抑えて症状を改善する効果があります。手術によってアレルギー自体を根絶することはできませんが、鼻閉が強い患者にとってはQOLの大幅な向上が期待できます。

早期発見のポイント

アレルギー性鼻炎は風邪と似た症状を呈することが多いため、初期段階では見逃されやすい傾向があります。くしゃみや鼻水、鼻づまりが数日以上続く場合や、朝方や掃除のあとなど特定の場面で症状が強くなる場合には、アレルギー性鼻炎の可能性があります。とくに透明で水のような鼻水が大量に出る、くしゃみが連続して止まらない、鼻づまりが慢性的に続くといった症状がある場合は、風邪ではなくアレルギーによるものかもしれません。

また、薬を服用しても改善しない、毎年同じ時期に症状が出る、家族にアレルギー体質の人がいるといった場合も、早めに医療機関を受診することが勧められます。アレルギー性鼻炎は放置すると日常生活に影響を及ぼすだけでなく、慢性副鼻腔炎や中耳炎、気管支喘息などを引き起こすリスクもあるため、早期に正確な診断を受け、適切な対策を始めることが重要です。

予防

アレルギー性鼻炎を完全に防ぐことは難しいものの、日常生活における工夫や体調管理によって、発症や症状の悪化をある程度抑えることは可能です。

アレルギー性鼻炎の予防

予防の基本は、アレルゲンとの接触をできる限り避けることにあります。季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の場合は、花粉の飛散情報をこまめにチェックし、飛散量の多い時期にはなるべく外出を控えるようにしましょう。外出する際にはマスクや眼鏡、帽子などを着用し、花粉が鼻や目、髪の毛や衣類に付着するのを防ぎます。帰宅後は玄関で衣類をよく払い、すぐに洗顔やうがいをして体に付着した花粉を落とすと効果的です。洗濯物は部屋干しにするか、外干しする場合は取り込む前によく払い、花粉の室内侵入を防ぎましょう。

一方、通年性アレルギー性鼻炎の対策としては、室内環境の整備が重要です。特にダニ、カビ、ハウスダスト、ペットの毛などが主なアレルゲンとなるため、寝具やカーテンを定期的に洗濯し、布団は天日干しや布団乾燥機を活用しましょう。家具や床のほこりをこまめに拭き取り、掃除機をかける際は排気の少ないタイプを使用すると効果的です。防ダニカバーを使用したり、ぬいぐるみなどほこりがたまりやすい物はなるべく減らしたりするのも対策のひとつです。湿度が高いとカビが繁殖しやすくなるため、除湿機や換気扇を活用して室内の湿度を40〜60%程度に保つよう心がけましょう。

生活習慣の改善

アレルギー症状を悪化させないためには、日頃からの体調管理も欠かせません。十分な睡眠をとり、栄養バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動を継続することで免疫機能を正常に保つことが期待できます。特にビタミン類や乳酸菌を多く含む食品は腸内環境を整え、アレルギー症状の緩和に寄与する可能性があります。加えて、ストレスや疲労の蓄積は免疫機能に悪影響を与えるため、リラックスできる時間を持つなど心身の健康維持にも努めましょう。飲酒や喫煙も鼻の粘膜を刺激して症状を悪化させる可能性があるため、できるだけ控えることが望ましいとされています。

リスクの有無に関わらず、体調に異変を感じたら早めに受診し、医師に相談しましょう。