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胃ポリープ

胃もたれ食欲不振 胃・食道の病気

疾患の概要

胃ポリープとは、胃の内側の粘膜表面から生じる隆起性のポリープの総称です。
多くはがんではない良性のもので、胃の内腔に丸い突起物として現れます。
自覚症状がほとんどなく、健康診断のX線造影検査や内視鏡検査で偶然発見されることが多い病変です。
胃ポリープは大腸のポリープほど頻繁には見つからない比較的まれな病変ですが、近年は内視鏡検査の普及により発見される機会が増えてきています。
また、発見される年齢は中高年以降に多い傾向があります。

胃ポリープにはいくつかのタイプがあり、主に「胃底腺ポリープ」と「過形成性ポリープ」が頻繁にみられます。
胃底腺ポリープは胃の正常な粘膜から発生する小さなポリープで、一方の過形成性ポリープは胃粘膜に慢性的な炎症がある場合に生じるものです。
これらの良性ポリープががん化することはまれであり、通常は深刻な問題を引き起こしません。

しかし、胃ポリープの中には将来的にがんに変化する可能性のあるものも含まれます。
例えば「腺腫」と呼ばれる腫瘍性のポリープは、将来がん化するリスクのある病変に該当し注意が必要です。
そのため、胃ポリープと診断された場合には、ポリープの種類や性質に応じて適切な経過観察や治療が行われます。

症状

胃ポリープの多くは自覚症状を伴いません。
そのため、症状によって気づくことは難しく、定期検診や他の目的で行った検査で偶然見つかる場合がほとんどです。
ポリープが小さいうちは、痛みや不快感、胃もたれなどを感じることは通常ありません。
実際、胃がんや胃潰瘍のように激しい腹痛や嘔吐、胸やけといった症状を引き起こすことはほとんどなく、自覚できるサインが乏しいのが特徴です。

ただし、ごくまれにポリープが大きく成長したり多数発生したりすると、胃の不快感や胃もたれ、食欲不振などの症状が現れることがあります。
ポリープが胃の出口付近で大きくなった場合には、食べ物の通過が妨げられ、早く満腹になったり食欲が低下したりすることもあります。

また、ポリープの表面から出血があると、その出血が続くことで貧血を引き起こすことがあります。
貧血になると、めまいや動悸などの症状が現れることがあります。
一般的には、こうした症状が出現するケースは稀であり、大部分の胃ポリープは症状なく存在しています。

原因

胃ポリープができる背景には、胃粘膜の状態や外的要因などいくつかの要因が関与しています。
ポリープの種類ごとに発生理由が異なり、それぞれ以下のような特徴があります。

まず、過形成性ポリープは胃粘膜の慢性的な炎症が主な原因とされています。
ピロリ菌感染による慢性胃炎が土台になることが多く、ピロリ菌に感染した萎縮性胃炎のある胃にポリープが発生しやすいことが知られています。
胃粘膜が炎症によって刺激され、細胞が過剰に増殖することで隆起が形成されると考えられています。
実際、ピロリ菌を除菌することで、過形成性ポリープが小さくなったり消失したりする例が多く報告されています。

一方、胃底腺ポリープは炎症のない正常な胃粘膜に発生するタイプのポリープです。
明確な原因は完全には解明されていませんが、胃酸分泌を抑える薬剤を長期間服用している人では、胃底腺ポリープが大きくなったり数が増えたりすることが報告されています。
また、ピロリ菌に感染していない健康な胃に好発する傾向があります。
このことから、胃底腺ポリープの発生には胃酸分泌の状態や薬剤の影響が関与していると考えられます。

その他にも特殊なケースとして、慢性的な刺激や傷害による「炎症性ポリープ」が挙げられます。
例えば、長期間の非ステロイド性抗炎症薬の服用などで胃に慢性的な刺激が加わると、まれに炎症性ポリープが発生することがあります。

さらに、ごくまれではありますが、遺伝的な素因による多数のポリープができる体質の一環として胃にポリープが多数できる場合もあります。
このような家族性の要因では、若年時からポリープが発生することもあります。

治療

胃ポリープの治療方針は、ポリープの種類、大きさ、そして症状の有無によって異なります。
基本的に、良性で小さいポリープで症状もなく、悪性化の所見がなければ、すぐに切除せず経過観察となることが多いです。
例えば胃底腺ポリープはがん化のリスクが極めて低いため、内視鏡検査で発見されてもその場で切除せず定期的な観察に留めるのが一般的です。
過形成性ポリープも、小さいうちは治療をせず、年に1回程度の胃カメラ検査で大きさや数に変化がないか経過を見ます。

検査の結果、ピロリ菌に感染していることが判明した場合には、ポリープ自体への対応とともにピロリ菌の除菌治療を行います。
除菌によって胃の炎症環境が改善され、多くの過形成性ポリープは縮小あるいは消失することが期待できます。

一方で、ポリープが大きい場合や数が多い場合、あるいは表面の形状が不整で内視鏡で見てがんの疑いがある場合には、積極的な治療が検討されます。
目安としてポリープの大きさが2cm以上の場合や、貧血など症状の原因となっている場合には、内視鏡による切除が推奨されます。
内視鏡治療では、胃カメラに付属した器具を用いてポリープを切除します。
具体的には、ポリープの根元をワイヤーで輪状に締めて切断するポリペクトミーや、粘膜の一部ごと切り取る内視鏡的粘膜切除術・粘膜下層剥離術といった方法があります。
これらの手技では、高周波電流によって組織を焼灼しながら安全にポリープを取り除くことができます。

切除されたポリープ片は病理組織検査で詳しく調べられ、良性か悪性かが評価されます。
万が一検査でがん細胞が認められた場合には、その段階で早期胃がんとして追加の治療が検討されます。
多くの場合、内視鏡による追加切除や、必要に応じて外科的手術が行われます。

なお、ポリープが出血を伴っている場合や痛みなど明らかな症状を引き起こしている場合も、症状緩和と合併症予防のために内視鏡的切除が選択されます。
ごく稀ですが、非常に大きなポリープで内視鏡による切除が困難なケースでは、外科手術による摘出が検討されることもあります。

早期発見のポイント

胃ポリープは症状が乏しく、自覚によって早期に見つけることは困難です。
そのため、早期発見のためには定期的に胃の検査を受けることが重要です。
特に日本では胃がん検診も兼ねて、一定年齢以上の方は定期的な検査が推奨されています。

胃の検査にはX線造影検査と胃カメラがありますが、より精密に観察できる胃カメラの方が早期発見に有効です。
胃カメラであれば小さなポリープや初期の病変も直接確認でき、その場で組織の一部を採取して検査することも可能です。
一方、X線造影検査ではポリープの場所や大きさによっては見落としが起こる恐れがあり、またポリープが良性か悪性かまで判別することは困難です。
したがって、健診でX線造影検査のみ行っている方も、必要に応じて胃カメラによる精密検査を受けることが望ましいでしょう。

早期発見のためには、症状の有無に関わらず定期的な内視鏡検査を受けることが勧められています。
目安として、年に1回程度は消化器内科で胃カメラ検査を受診することが推奨されます。
特に、以下のようなリスク要因を持つ方はこまめな検査が大切です。

  • ピロリ菌感染により慢性胃炎と診断されたことがある方。
  • 胃潰瘍や十二指腸潰瘍の既往がある方。
  • ご家族に胃がんになった方がいる場合。
  • 塩分の多い食事や喫煙・多量飲酒など胃に負担をかける生活習慣がある方。
  • 40歳以上の中高年の方。

上記に該当する場合、胃ポリープだけでなく胃がんのリスクも高くなる傾向があるため、定期的に医療機関で胃のチェックを受けるようにしましょう。
健診で「胃にポリープがある」と指摘された場合も、放置せず専門医による追加検査を受けることが重要です。
胃カメラで詳しく観察し、必要ならば生検を行うことで、良性のポリープかどうか、治療が必要かどうかを正確に判断できます。
早期に正しく診断し対処することで、将来的なリスクを大幅に減らすことが可能になります。

予防

胃ポリープそのものを完全に防ぐ確立された方法はありませんが、リスクを下げるための取り組みや、ポリープが見つかった後にがんへ進行させないための予防策があります。

除菌治療

ピロリ菌への対策が重要です。
ピロリ菌感染は過形成性ポリープや胃がんの大きなリスク要因となるため、ピロリ菌に感染している場合は早めに除菌治療を行うことが勧められます。
若いうちにピロリ菌を除菌することで、将来的に胃ポリープや胃がんが発生するリスクを減らすことが可能です。
実際、ピロリ菌を除菌することで胃の炎症状態が改善し、過形成性ポリープが縮小・消失するケースが多いことが分かっています。

医薬品の使用

医薬品の適切な使用も予防につながります。
長期間のプロトンポンプ阻害薬など胃酸を抑える薬剤の使用は、胃底腺ポリープの発生に関連することがあります。
必要のない長期連用は避け、医師の指示のもと最適な量と期間で使用するようにしましょう。

生活習慣の改善

生活習慣の改善も胃の健康維持には有効です。
塩分過多の食事や喫煙・過度の飲酒は胃粘膜を傷つけて慢性胃炎を招きやすく、結果的にポリープや胃がんのリスクを高める可能性があります。
野菜や果物を取り入れたバランスの良い食事を心がけ、アルコールやタバコは控えめにすることで、胃への負担を減らしましょう。
規則正しい食生活と適度な運動は、胃だけでなく全身の健康維持にもつながります。

定期検診

定期検診を受けてポリープを早期に発見し、適切に対処すること自体が予防策となります。
もし胃ポリープが見つかった場合でも、医師の指示に従い計画的に経過観察や切除を行っていけば、ポリープががんに進行するのを防ぐことができます。
小さいうちにポリープを取り除いておくことで、将来のリスクを未然に排除できるのです。

これらの対策を総合的に実践することで、胃ポリープによるトラブルを最小限に抑えることが期待できます。

リスクの有無に関わらず、体調に異変を感じたら早めに受診し、医師に相談しましょう。