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食中毒(ウェルシュ菌食中毒、サルモネラ食中毒など)
疾患の概要
食中毒とは、細菌・ウイルス・化学物質・自然毒などが原因で起こる急性の健康障害の総称です。特に身近なのが細菌性食中毒で、毎年多くの患者が報告されています。
代表的な原因菌には以下があります。
・ウェルシュ菌:煮込み料理などの加熱後の常温放置が原因
・サルモネラ菌:生卵や加熱不十分な鶏肉などから感染
これらは特に高温多湿な時期に増殖しやすく、集団感染の原因にもなります。
食中毒は、発症の速さや症状の強さに個人差があるものの、感染源の特定と早期対応によって重症化を防ぐことができます。
また、食品の取り扱いや調理時の温度管理、手指の衛生状態などを適切に管理することで、多くの食中毒は未然に防ぐことが可能です。
特に施設給食や飲食店での発生は社会的影響が大きいため、食品衛生法に基づく衛生管理やHACCP(危害要因分析に基づく衛生管理)に沿った調理体制の徹底が重要です。
家庭でも、肉類と野菜の調理器具を分ける、中心温度を確認して十分に加熱する、調理後すぐに食べる、清潔な手で取り分けるなど、日常的な配慮が感染予防に直結します。
また、冷蔵庫内でも温度の確認や食材の賞味期限、保管方法に注意することで、細菌の繁殖を防ぐことができます。
近年は、高齢化社会の進展により、免疫力が低下した高齢者の食中毒が注目されています。
老人ホームや病院などでは食材の選定や提供方法に一層の慎重さが求められています。
また、乳幼児にとっても食中毒は命に関わる事態につながるため、家庭内での調理や衛生管理の見直しも不可欠です。
症状
食中毒の症状は原因菌によって異なりますが、共通して見られるのは以下のような消化器症状です。
・下痢
・腹痛
・発熱
・吐き気・嘔吐
ウェルシュ菌の場合
・潜伏期間:約6〜18時間・症状:水様性下痢、軽〜中等度の腹痛(発熱や嘔吐はまれ)
・通常は1〜2日で軽快
サルモネラ菌の場合
・潜伏期間:約6〜72時間・症状:38℃以上の発熱、激しい下痢、腹痛、嘔吐
・小児・高齢者では脱水や菌血症に注意
特に脱水症状(口の渇き、尿量減少、倦怠感など)には要注意。重症化を防ぐためにも、早めの受診が重要です。
原因
ウェルシュ菌
・嫌気性菌で、土壌や動物の腸内に存在・芽胞を形成し、加熱に強い
・大量調理の煮込み料理で常温放置により繁殖
・学校・施設・飲食店などで集団感染が多い
サルモネラ菌
・生卵や加熱不十分な鶏肉が感染源・卵の殻や内部に菌が存在することも
・調理器具の交差汚染に注意
・常温保存による菌の増殖もリスク要因
特に夏場は菌の繁殖が早まるため、調理・保存・再加熱の温度管理が重要です。
治療
多くの食中毒は、水分補給と安静を守れば自然に回復します。以下が基本対応です。
・経口補水液などで水分・電解質を補給
・食事は無理をせず、症状が落ち着いてからおかゆ・うどんなどを少量から再開
・脂っこい食事や生ものは避ける
薬の使用について
・抗菌薬:サルモネラ重症例や高リスク者に限定的に使用・ウェルシュ菌には通常不要
・下痢止めは自己判断で使わないこと(菌の排出を妨げるため)
早期発見のポイント
以下の状況に該当する場合は、食中毒を疑って早めの対応が重要です。
- 食後24時間以内に発症
- 同じ食事を摂った他の人も症状あり
- 調理から時間が経った煮物や卵料理などを食べた
- 血便、脱水、意識低下などの異常がある
必要に応じて保健所への連絡も検討します。便培養による原因菌の特定が診断に有効です。
予防
基本の衛生管理
・手洗いの徹底(調理前後、トイレの後)・まな板・包丁の使い分け(生肉と野菜)
・調理器具の洗浄・消毒(熱湯または塩素系)
温度管理の徹底・加熱は中心温度75℃以上
・加熱後はすぐ食べる or 冷蔵保存(早めに食べる)・再加熱も中心部までしっかり
・冷蔵庫の温度・食材の期限チェックも重要
高リスク者への配慮も忘れずに
・高齢者施設・病院・保育園では特に注意が必要・免疫力が低下した高齢者や乳幼児では重症化リスクが高い
・食材選びや提供方法も慎重に見直しましょう