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風邪

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疾患の概要

風邪は、主に鼻や喉といった上気道にウイルスが感染して起こる急性の炎症性疾患で、日本人の誰もが経験したことのあるもっとも一般的な感染症です。正式な医学用語では「急性上気道炎」と呼ばれますが、一般的には「風邪」という名称が広く使われており、日常生活でもなじみのある言葉です。特定のウイルスが原因というわけではなく、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスなど、非常に多くのウイルスによって似たような症状が引き起こされるため、それらを総称して「風邪」と表現しています。

風邪は通常、軽度の症状で自然に治癒することが多く、命に関わるような重篤な状態に至ることはほとんどありません。症状は数日から1週間程度で治まることが多く、特別な治療を必要としないケースが大半です。市販の風邪薬や十分な休養によって改善する例が多く、家庭での対応で回復することが一般的です。発症する年齢層も幅広く、小児から高齢者まで誰にでも起こり得る疾患ですが、特に免疫機能が未発達な乳幼児や、集団生活を送る学童期の子どもでは、年間に何度も風邪をひくことが珍しくありません。また、免疫機能が低下しやすい高齢者や基礎疾患を持つ方でも、風邪をきっかけに体調を崩すことがあります。

日本では空気が乾燥し気温が下がる冬季にかけて患者数が増加する傾向がありますが、原因ウイルスによっては春先や夏にも流行することがあり、年間を通じて発症する可能性のある疾患です。特に人が密集する場所では飛沫感染や接触感染によって拡がりやすく、学校、職場、家庭、保育園、医療機関などあらゆる場面で感染が広がるリスクがあります。風邪はありふれた疾患である一方、日常生活や仕事、学業に支障をきたす要因にもなるため、適切な対処と予防が大切です。

症状

風邪の症状は主に鼻や喉を中心とする上気道に現れます。典型的な初期症状として、のどの違和感や軽い痛み、鼻水、鼻づまり、くしゃみが挙げられ、その後に乾いた咳が出ることもあります。発熱はあっても微熱にとどまることが多く、38度を超えるような高熱はあまり見られません。全身の倦怠感は軽度で、頭痛や関節痛も比較的軽く済む傾向があります。話すと声がかすれたり、のどの腫れによって飲み込みにくさを感じたりすることもあります。

症状の経過はゆるやかで、初期症状が1~2日続いた後、咳や鼻水が強くなってくることが多く見られます。多くの場合、数日から1週間程度で自然に回復し、日常生活に大きな支障をきたすことはありません。安静にして体を温め、十分な睡眠と水分補給を心がけることで、比較的速やかに症状は改善していきます。ただし、疲労や睡眠不足、ストレスの蓄積などがあると、回復までに時間がかかる場合もあり、体力の消耗を防ぐためにも早めの休養が大切です。

風邪を理由に重篤な合併症を起こすケースは非常に少ないとされていますが、乳幼児や高齢者、慢性疾患のある人では注意が必要です。風邪をきっかけに中耳炎や副鼻腔炎、気管支炎、まれに肺炎を併発することがあり、軽視できません。特に咳が長引く、痰が濃くなる、呼吸が苦しくなる、再度発熱するといった場合は、二次感染の可能性があるため、医療機関での診察を受けることが勧められます。

原因

風邪の原因となるウイルスは200種類以上あるとされており、代表的なものにライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、パラインフルエンザウイルスなどがあります。なかでもライノウイルスは風邪の約30〜50%に関与しており、風邪の代表的な原因ウイルスです。これらのウイルスは感染者の咳やくしゃみによる飛沫、あるいは手指や物品を介した接触によって他人にうつります。たとえばウイルスが付着した手で口や鼻を触ることで感染が成立することがあります。

また、ドアノブや電車のつり革、スマートフォンなど身の回りの物品を介した接触感染が多いため、こまめな手洗いや消毒が予防には欠かせません。ウイルスの種類によっては、症状が軽くても感染力が高いものや、空気中を長時間漂いやすい特性を持つものもあり、注意が必要です。

原因となるウイルスの種類が非常に多く、また一度感染しても獲得される免疫が短期間しか持続しないため、同じ人が年に何度も風邪をひくことがあります。さらに、ウイルスの変異や型の違いによって免疫が働かない場合もあるため、完全に防ぐことは難しく、風邪は日常的に繰り返し発症する可能性のある感染症といえます。

治療

風邪は自然治癒する病気であるため、基本的な治療は安静と十分な水分補給、栄養摂取を心がけることです。軽い発熱やのどの痛み、咳、鼻水などの症状に対しては、対症療法として市販の風邪薬を使用することがあります。
解熱鎮痛薬としてはアセトアミノフェンやイブプロフェンが使われ、喉の痛みや頭痛の緩和に有効です。咳には鎮咳薬や去痰薬、鼻水やくしゃみには抗ヒスタミン薬などが用いられます。また、喉の不快感を和らげるためにトローチやうがい薬を併用するのもよいでしょう。

重要なのは、これらの薬が風邪の原因ウイルス自体を取り除くものではないということです。あくまで症状を軽減し、日常生活を快適に過ごすための手段であり、ウイルスに対する根本的な治療薬ではありません。抗生物質は細菌に作用する薬であり、風邪の原因であるウイルスには効果がありません。細菌感染が明らかに疑われる場合を除いて、風邪に対して抗生物質を使用することは推奨されません。

早期発見のポイント

風邪の初期症状は他の感染症と共通していることもあるため、症状の変化や進行に注意することが重要です。たとえば、のどの痛みや鼻水、咳といった軽微な症状が続いているうちは風邪の可能性が高いですが、急激な高熱や全身の強い倦怠感を伴うようであればインフルエンザなど別の疾患も考慮する必要があります。呼吸が苦しい、声が出にくい、咳が止まらないといった場合も、より重い病気の可能性があるため注意が必要です。

風邪の症状が一度落ち着いたあと、再び発熱や咳が悪化するなどの経過をたどる場合は、副鼻腔炎や細菌性の気管支炎、肺炎などを併発している可能性があります。こうした二次感染や重症化を避けるためにも、症状が長引く、または悪化してきた場合は医療機関を受診しましょう。とくに痰が黄緑色になる、胸が痛む、息切れが出てくるといった症状は細菌感染を示唆することがあります。

特に小児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方は、比較的軽い症状でも念のため早めに相談することが勧められます。早期に診察を受けることで、合併症の予防や回復の促進につながります。日常的な体調の変化に気づいた際には、無理をせず、早めの受診を心がけることが大切です。

予防

風邪の予防には、日常生活での基本的な衛生習慣が大切です。もっとも有効とされているのは手洗いであり、外出先から戻った際や、食事前、トイレのあとなどには、石けんと流水でしっかりと手を洗う習慣をつけましょう。とくに指先や爪の周囲、手の甲や手首まで丁寧に洗うことが重要です。アルコール消毒も有効ですが、ウイルスによっては石けんと水による洗浄の方が効果的な場合もあります。

咳エチケットとマスクの活用

風邪のウイルスは主に鼻や口、目などの粘膜を通じて体内に侵入するため、手で顔を触る癖のある人は注意が必要です。無意識に目や鼻に触れてしまうことで、ウイルスが簡単に取り込まれてしまいます。うがいは喉の乾燥を防ぐと同時に、口腔内の細菌やウイルスを洗い流す効果があり、帰宅後の習慣として取り入れると良いでしょう。

また、咳エチケットも感染拡大を防ぐために重要です。咳やくしゃみをする際には、ティッシュやハンカチ、または衣服の袖で口と鼻を覆い、飛沫が周囲に飛び散らないようにします。使用済みのティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、手洗いを徹底しましょう。マスクの着用は、他人への感染を防ぐだけでなく、自分自身の鼻や喉の粘膜を保湿し、防御力を高める効果もあります。とくに乾燥した季節や人が多い場所では、積極的にマスクを着用することが勧められます。

その他の予防ポイント

室内の湿度を適度に保つことも風邪の予防には有効です。湿度が40〜60%程度に保たれていると、ウイルスの飛散が抑えられるとされており、加湿器を活用するほか、濡れタオルを室内に干すといった簡単な工夫も効果的です。乾燥した空気は粘膜を弱らせ、ウイルスが侵入しやすくなるため、特に就寝時の加湿対策が重要になります。

そして、日頃から免疫力を保つための体調管理も欠かせません。十分な睡眠、栄養バランスのとれた食事、適度な運動を継続することで、体の抵抗力を高めておくことができます。暴飲暴食や不規則な生活は免疫機能の低下を招くため、風邪が流行する時期ほど生活リズムを整えることが大切です。日々の小さな積み重ねが風邪の予防につながります。

リスクの有無に関わらず、体調に異変を感じたら早めに受診し、医師に相談しましょう。