大阪府大阪市東住吉区駒川5丁目23−18
針中野医療ビル(針中野クリニックモール) 2F

病気や症状についてわかりやすく伝える
医学情報サイト

咽頭炎

倦怠感・だるさ喉の痛み息切れ発熱・高熱関節痛 内科の病気

疾患の概要

咽頭炎は、喉の奥にある「咽頭」と呼ばれる部位に炎症が起こる病気です。咽頭は鼻や口から吸い込んだ空気や食べ物が通過する重要な通路であり、口腔や鼻腔、喉頭、食道の入り口とつながる構造をしています。この咽頭にウイルスや細菌などの病原体が感染して炎症が起こると、のどの痛みや腫れ、違和感、発熱などの症状が現れます。

咽頭炎は単独で発症することもありますが、風邪やインフルエンザなどの上気道感染症の一部として起こることが多く、日常的によく見られる疾患です。特に気温が下がる冬季や季節の変わり目には発症が増加し、乾燥した空気やウイルスの流行も相まって、小児や高齢者、免疫力が低下している人に多く見られます。

咽頭炎の原因の多くはウイルス感染によるもので、ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、エンテロウイルスなどがよく知られています。ウイルス性の咽頭炎は多くの場合自然軽快し、安静と対症療法によって数日から1週間程度で回復します。のどの乾燥や使いすぎが原因で炎症を起こすこともあり、声の出しすぎや喫煙、口呼吸なども誘因となります。

一方で、細菌が原因となる咽頭炎も存在し、なかでも代表的なのがA群β溶血性連鎖球菌、いわゆる溶連菌による咽頭炎です。特に5〜15歳の学童期の小児に多く見られ、急な高熱と激しいのどの痛みを伴うのが特徴です。咳や鼻水が少ない一方で、扁桃の白苔(膿)が見られることも多く、全身のだるさやリンパ節の腫れを伴います。細菌性の咽頭炎では抗生物質による治療が必要で、放置するとリウマチ熱や糸球体腎炎といった合併症を引き起こす恐れがあるため、早期の診断と治療が大切です。

一般的に咽頭炎は適切な対応で治癒する予後の良い疾患とされていますが、なかには扁桃周囲膿瘍や喉頭蓋炎など、重症化して気道を圧迫するような危険な合併症を起こすケースもあります。のどの痛みや発熱が長引く、呼吸が苦しい、水分が摂れないなどの症状がある場合には、自己判断せず早めに医療機関を受診することが重要です。

症状

咽頭炎の主な症状は、のどの痛みです。咽頭の粘膜が炎症によって赤く腫れ、飲み込むときや会話時に痛みを感じることが多く、痛みが耳に響くように感じられることもあります。咳や痰、鼻水などの上気道症状を伴うことが多く、発熱、頭痛、倦怠感などの全身症状がみられることもあります。のどの奥を鏡で見ると、咽頭後壁が赤くなっていたり、白い斑点や腫れが確認される場合もあります。また、首のリンパ節が腫れ、触ると痛むこともよくあります。

小児では、のどの痛みが強いため唾液をうまく飲み込めず、よだれが増える、水分が摂れない、ぐったりするなど脱水の兆候が現れることがあります。発熱とともに食欲が低下し、活動量が減るようであれば注意が必要です。

ウイルス性咽頭炎では、鼻水や咳などのかぜ症状を伴いながら軽快していくことが多いですが、インフルエンザウイルスが原因の場合には、急な高熱と強いのどの痛み、倦怠感や筋肉痛を伴うことが特徴です。また、エンテロウイルスによる咽頭炎では、のどに小さな水疱や潰瘍が見られ、痛みに加えて口内の不快感を訴えることがあります。

さらに、EBウイルスによる伝染性単核球症では、扁桃や咽頭が著しく腫れて気道を圧迫し、呼吸困難を引き起こすことがあります。同時に多くのリンパ節の腫れや強い倦怠感、発疹などがみられるのも特徴です。これらの症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

原因

咽頭炎の原因の多くはウイルス感染です。ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、インフルエンザウイルスなど、風邪の原因となるウイルスの多くが咽頭にも感染し、炎症を引き起こします。これらのウイルスは飛沫感染や接触感染によってうつり、人混みや乾燥した環境では特に感染しやすくなります。

また、小児では手足口病やヘルパンギーナなどに伴って咽頭炎を起こすこともあります。これらはエンテロウイルスの一種が原因で、のどに小さな水疱ができるのが特徴です。

EBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)は唾液を介して感染し、伝染性単核球症の原因となります。思春期や若年成人に多く、咽頭炎を伴う強い倦怠感やリンパ節の腫れ、肝機能異常などが特徴です。

一方、細菌が原因となる咽頭炎もあり、全体の約2〜3割程度がこれに該当するとされています。もっとも頻度が高いのが溶連菌(A群β溶血性連鎖球菌)によるもので、5〜15歳の小児に好発します。急な高熱、激しいのどの痛み、扁桃の白苔(膿のようなもの)、発疹(猩紅熱)などが特徴で、抗生物質による治療が必要です。

稀な原因としては、ジフテリア菌、淋菌、クラミジアなど特殊な病原体による咽頭炎もあります。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、咽頭痛が初期症状として出現することが知られており、現在では鑑別診断に含める必要があります。

治療

咽頭炎の治療は、その原因に応じて異なります。ウイルス性咽頭炎の場合、特別な薬を使わなくても自然に軽快することが多く、安静と対症療法が基本です。のどの痛みには、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬が効果的で、痛みが強いときにはトローチやうがい薬、のどスプレーを併用すると症状が和らぎます。こまめに水分をとり、加湿器を使って喉の乾燥を防ぐことも大切です。

一方、細菌性咽頭炎では抗生物質による治療が必要になります。とくに溶連菌が原因とされる場合には、ペニシリン系またはマクロライド系の抗菌薬が用いられ、適切に服用することで症状の改善と合併症の予防が期待できます。処方された抗生物質は、たとえ症状が軽快しても自己判断で中断せず、医師の指示通りに最後まで飲み切ることが重要です。

また、強い痛みや高熱で食事や水分がとれないときには、点滴による補液が必要になる場合があります。重症例や、EBウイルス感染によって扁桃や咽頭が著しく腫れ、呼吸が妨げられるおそれがある場合は、入院のうえで呼吸管理や全身的な治療を行うこともあります。咽頭炎は多くの場合軽症で済みますが、経過や症状によっては適切な医療介入が必要となります。

早期発見のポイント

咽頭炎はかぜの一症状として軽く済む場合も多いですが、中には早めの受診が望ましいケースもあります。
次のような症状が見られるときは、早期に医療機関を受診してください。

嚥下困難や呼吸困難

特に注意したいのは、唾液や水分が飲み込めないほどの強い喉の痛みがあるときです。飲み込むたびに激痛が走り、食事や水分摂取ができなくなると脱水の危険が生じます。また、のどの腫れによって呼吸が苦しい、息がしづらいといった症状が出ている場合には、気道の閉塞をきたす可能性があり、早急な対応が求められます。
特に急性喉頭蓋炎は呼吸困難を引き起こすおそれがあるため、早急に耳鼻咽喉科での診察が必要です。

高熱や全身状態の悪化

39℃を超えるような高熱が長時間続いている場合も注意が必要で、単なるウイルス性の炎症ではなく、細菌性の咽頭炎や全身性の感染症の可能性が考えられます。のどの奥を覗いて白い膿が付着しているのが見えるときや、同時に皮膚に赤い発疹が現れている場合は、溶連菌感染症や猩紅熱などの可能性があり、医師による診察と検査が必要です。
特に乳幼児や高齢者で、元気がなくぐったりしている、水分を全く受けつけないといった状態がみられる場合は、早めに医療機関を受診し、点滴などの対応を受けることが勧められます。これらの症状は、細菌性の咽頭炎だけでなく、扁桃周囲膿瘍、伝染性単核球症、喉頭蓋炎など重篤な疾患が隠れている可能性があります。特に呼吸困難を感じるときは命に関わることもあるため、迷わず早急に受診することが重要です。

予防

咽頭炎の予防には、日常生活における基本的な感染対策を徹底することが何よりも重要です。外出後には必ず手洗いを行い、うがいによって口や喉に付着したウイルスや細菌を洗い流しましょう。咳やくしゃみの飛沫を防ぐためには、マスクの着用も効果的です。特に人混みの多い場所に行く際や、風邪やインフルエンザが流行する時期には、マスクを正しく着用して咽頭への感染リスクを下げることが推奨されます。

冬季には空気が乾燥しやすく、喉の粘膜が弱くなることでウイルスが侵入しやすくなります。そのため、室内では加湿器を使用するなどして適度な湿度(50〜60%程度)を保つよう心がけましょう。加湿は、咽頭の粘膜を保護し、炎症を予防する効果が期待されます。

また、日頃から十分な睡眠と栄養バランスの取れた食事を意識し、体力と免疫力を維持することも大切です。疲労や睡眠不足、偏った食生活は免疫機能を低下させ、感染のリスクを高める原因となります。インフルエンザや新型コロナウイルスなどに対する予防接種も、感染予防と重症化の防止に有効であるため、適切な時期に接種を受けることが勧められます。

喫煙は咽頭の粘膜を直接刺激し、炎症を起こしやすくするため、咽頭炎の予防の観点からも禁煙が推奨されます。受動喫煙も同様に喉への悪影響を及ぼすため、非喫煙者も周囲の環境に注意が必要です。さらに、家庭内や学校、職場などで咽頭炎が流行している場合には、タオルや食器、コップなどを共用しないようにし、身近なところから感染拡大を防ぐことが求められます。咽頭炎は適切な予防を意識することで、発症のリスクを大きく下げることができる疾患です。

リスクの有無に関わらず、体調に異変を感じたら早めに受診し、医師に相談しましょう。