2026.01.23

発熱や咳が長引くときに注意したいマイコプラズマ肺炎

かぜ・感染症

マイコプラズマ肺炎は発熱や咳が続くときに注意しておきたい病気のひとつです。

マイコプラズマ肺炎とは

マイコプラズマ肺炎は「肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)」という細菌の一種が原因となる呼吸器の感染症です。細菌に分類されますが、ほかの細菌と違って「細胞壁」を持たないという特徴があり、この性質のため一部の抗菌薬は効きにくいことが知られています。
日本では一年を通じて発生しますが、特に冬季を中心に増えやすく、学童期のお子さんから若い世代に多い感染症です。

マイコプラズマ肺炎の潜伏期間(うつってから症状が出るまでの期間)はおよそ2〜3週間と比較的長く、ゆっくり進行するのが特徴です。
最初はかぜのような症状で始まり「少ししんどいかな」「風邪だろう」と思っているうちに、だんだん咳が強くなり、長く続くようになります。そのため、「最初はかぜだと思っていたのに、なかなか治らず、検査をしたら肺炎だった」というケースも少なくありません。

また、マイコプラズマ肺炎は数年おきに全国的な流行を繰り返すことが知られており、ある年にはニュースや行政からの注意喚起が出るほど患者さんが増えることがあります。
家族内や学校・職場など、人が集まる場でうつることが多く「子どものクラスで流行している」「同僚が立て続けにかかっている」といった状況もみられます。こうした背景から、「発熱が続く」「咳が止まらない」といった症状が複数人でみられるときには、マイコプラズマ肺炎などの感染症を考えることが大切です。

マイコプラズマ肺炎に感染しても、全員が重い肺炎になるわけではありません。多くは軽い気管支炎などで済み、なかにはほとんど症状が目立たない方もいます。一方で、一部の方では肺炎として悪化したり、まれに中耳炎や胸膜炎・心筋炎・髄膜炎などの合併症を起こすことも報告されています。

こうした合併症は頻度としては多くありませんが「長引く咳」を軽く見ず、必要なときにきちんと検査・治療を受けることが、重症化を防ぐうえでも重要です。

このように、マイコプラズマ肺炎は「年齢に関係なく起こりうる」「かぜと区別がつきにくい」「咳が長引きやすい」という特徴を持つ感染症であり、発熱や咳が続くときに注意しておきたい病気のひとつです。

マイコプラズマ肺炎の主な症状と「かぜ」との違い

マイコプラズマ肺炎では、次のような症状がみられます。

  • 発熱(微熱程度のこともあれば、高熱が続くこともある)
  • 全身のだるさ、頭痛、食欲低下
  • 乾いた咳(痰が少ない、コンコンとした咳が続く)
  • 夜間に咳き込んで眠れない、明け方に咳が強くなる
  • のどの痛み、声のかすれ
  • 人によっては、胸の違和感や軽い胸の痛み
  • お子さんでは、鼻水や鼻づまりなどのかぜ症状が目立つこともある

特徴的なのは「咳が長く続きやすい」ことです。発熱やだるさが落ち着いたあとも、咳だけが3〜4週間程度続く場合もあります。
とくに夜から明け方に咳き込みやすく「寝ようとすると咳が出てしまう」「子どもが夜中に何度も起きてしまう」といった訴えもよくみられます。長引く咳で胸やおなかが筋肉痛のように痛くなることもあります。

一般的なかぜとの違いとしては、次のような点が挙げられます。

  • 市販のかぜ薬を数日飲んでも、咳やだるさがなかなか良くならない
  • 発熱が治まっても咳だけが長く続く
  • 鼻水やのどの強い痛みなどはそれほど目立たないことも多い
  • 症状のわりに、聴診(胸の音を聞く診察)で大きな異常が認められない

インフルエンザ新型コロナウイルス感染症と比べると、急な高熱や強い関節痛よりも「少しゆっくり始まって、咳だけがいつまでも続く」という印象のことが多いですが、初期の段階では見分けがつきにくい場合もあります。

また、次のような症状は重症化のサインとなるため、注意が必要です。

  • 息苦しさや呼吸のしにくさを強く感じる
  • 少し動いただけで息が上がる、階段で強い息切れが出る
  • 胸の痛み(特に深呼吸や咳をしたときに痛い)
  • 顔色が悪い、唇が紫色っぽく見える
  • 呼吸の回数が明らかに増えている、ゼーゼーとした音がする
  • 高熱が数日以上続き、水分も取りにくくなっている

こうした症状がある場合には、年齢を問わず早めの受診が重要です。特に小さなお子さんや高齢の方、心臓や肺の病気、糖尿病などの持病がある方では、症状が急に悪化することもあるため注意が必要です。

どんな検査と治療を行うのか

診察ではまず「いつからどのような症状が続いているのか」「周囲でマイコプラズマ肺炎などの感染症が流行していないか」といった情報を丁寧に確認します。具体的には、次のような点を伺います。

  • 発熱が続いている日数、熱の高さや変動の様子
  • 咳が出始めてからどのくらい経っているか
  • 学校や職場、家族の中で似た症状の人がいないか
  • 基礎疾患(心臓病、肺の病気、糖尿病など)の有無
  • 妊娠中かどうか、普段飲んでいる薬があるか

そのうえで、必要に応じて次のような検査を行います。

  • 胸部レントゲン検査:肺炎の有無や、影の広がり具合を確認する
  • 血液検査:炎症の程度や、ほかの病気が隠れていないかを調べる
  • マイコプラズマ肺炎に関連した検査:状況に応じて、抗体検査や遺伝子検査、迅速検査などを行うことがある

マイコプラズマ肺炎と診断された場合、治療の中心は抗菌薬(抗生物質)です。マイコプラズマ肺炎は細胞壁を持たないため、この特徴を踏まえて効果が期待できる薬を選びます。
症状や年齢・持病・ほかの薬との飲み合わせなどを考慮して、医師が適切な薬と飲み方を判断します。

多くの場合は外来で内服治療が可能で、次のような自宅での過ごし方が大切です。

  • しっかり休養をとり、無理をして学校や仕事に行かない
  • 水分をこまめにとり、脱水を防ぐ(お水・お茶・経口補水液など)
  • 食欲がないときは、消化のよいものを少しずつとる
  • 高熱や頭痛がつらいときは、医師の指示のもと解熱鎮痛薬を使う
  • 処方された抗菌薬は、自己判断で中断せず指示どおり飲み切る

咳止めの薬や去痰薬(痰を出しやすくする薬)が併用されることもありますが、すべての咳を完全に止めてしまうと、かえって痰が出にくくなることもあります。薬の使い方については、診察時に医師や薬剤師の説明をよく聞いておきましょう。

症状によっては、点滴治療や入院が必要になることもあります。特に、呼吸が苦しい・水分がほとんどとれない・意識がぼんやりしているといった場合は、早めの受診・救急受診が必要です。

周囲にうつさないための対策と受診の目安

マイコプラズマ肺炎は、主に咳やくしゃみによる飛沫感染と、手指を介した接触感染で広がります。
家庭や学校、職場で広がらないようにするため、次のような対策が大切です。

周囲にうつさないための対策

マイコプラズマ肺炎には、現時点で一般向けの予防接種(ワクチン)はありません。そのため、インフルエンザのように「ワクチンで完全に予防する」ということはできず、日常生活での基本的な感染対策がとても重要になります。

  • 咳やくしゃみが出るときはマスクを着用する
  • 咳エチケット(口や鼻をティッシュや袖でおさえる)を心がける
  • 外出後や咳・くしゃみのあとには、石けんによる手洗いやアルコール手指消毒を行う
  • 部屋の換気をこまめに行い、空気を入れ替える
  • タオルやコップ・食器の共用を避ける
  • 可能であれば、家族と寝室を分けて休む

家族の中でマイコプラズマ肺炎の方がいる場合、必要以上に神経質になる必要はありませんが、食器やタオルを分ける・マスクと手洗いを徹底するだけでも、家族内での広がりをある程度抑えられると考えられています。
とくに小さなお子さんや基礎疾患のあるご家族がいる場合には、丁寧な対策が安心につながります。

学校や職場では、無理をして登校・出勤を続けると周囲に広がるおそれがあります。熱が高い間や咳が強い時期は、できるだけ安静にして休むことも大切な「感染対策」です。

受診の目安

次のような場合は、早めに医療機関への相談・受診をおすすめします。

  • 発熱が3日以上続き、つらさが増している
  • 咳が1週間以上続き「咳が止まらない」と感じる
  • 市販のかぜ薬を飲んでも、症状があまり改善しない
  • 息苦しさ・胸の痛み・呼吸の速さが気になる
  • お子さん・高齢の方・持病(心臓・肺・糖尿病など)がある方で症状が長引いている

「受診するほどではないかも」と迷う場合でも「こういう症状でも診てもらえますか」とお気軽にご相談ください。早めに相談することで、肺炎の見逃しや重症化を防げる可能性があります。

まとめ:咳が長引くときは我慢せず相談を

マイコプラズマ肺炎は、子どもから若い世代に多いものの、どの年代でも起こりうる呼吸器の感染症です。

  • 最初はかぜに似た症状から始まりやすい
  • 発熱やだるさが落ち着いても「咳だけが長く続く」ことがある
  • 市販薬で様子を見ているうちに、肺炎になっていることもある

といった特徴があるため「様子を見ていたら長引いてしまった」という方も少なくありません。

発熱や咳が続くとき、息苦しさや胸の痛みを感じるときは、我慢せず早めに受診することで、重症化を防ぐことが期待できます。特に「咳が止まらない」「周りでマイコプラズマ肺炎が流行している」といった状況では、一度医療機関で診察を受けると安心です。

針中野内科消化器内視鏡クリニックでは、発熱や咳が続く方の診察、必要に応じた検査・治療に対応しています。「かぜかもしれないけれど心配」「どのタイミングで受診すべきか迷っている」といった場合も、お一人で悩まずどうぞお気軽にご相談ください。患者さん一人ひとりの症状や背景に合わせて、適切な検査や治療・生活上のアドバイス等を行ってまいります。