2025.12.12

【年末年始の胃腸トラブル】今なぜ増える?症状・傾向・リスクを解説

健康管理 胃腸の働き 食生活

年末年始の食べ過ぎ、飲み過ぎによる胃腸のトラブルの原因、その後の対応について解説します。

年末年始は、忘年会や新年会、家族や友人との会食が増え、普段より食べ過ぎ・飲み過ぎになりやすい時期です。
「最近なんとなく胃が重い」「下痢と便秘をくり返している」「胸やけが続いているけれど、年末だから仕方ないか」とそのままにしていないでしょうか。
このコラムでは年末年始に増える胃腸トラブルの理由と、よくみられる症状、自宅でできるセルフケア、そして医療機関を受診すべき目安について、内科・消化器の視点から分かりやすく解説します。

年末年始の胃腸トラブルが増える理由

年末年始に胃腸トラブルが多くなる大きな理由は、生活リズム食生活の変化です。
忘年会や新年会では、普段より量の多い食事や脂っこい料理、甘いデザートが並び、お酒の量も増えがちです。夜遅くまで飲み食いを続けることで、胃腸が休む時間を失い、消化が追いつかなくなります。その結果、胃もたれ、胃痛、胸やけ、お腹の張りなどの症状が出やすくなります。

さらに、年末は仕事の忙しさや一年の疲れ、人間関係のストレスが重なり、自律神経のバランスが乱れやすくなります。自律神経は胃や腸の動き、胃酸の分泌などをコントロールしているため、乱れると胃酸が出過ぎたり、腸の動きが不安定になったりして、胃痛下痢便秘
などにつながります。
冬は、ノロウイルスなどによる、感染性胃腸炎食中毒
が増える季節でもあります。特に11月から3月にかけては、ノロウイルスによる食中毒が多いことが知られており、嘔吐や下痢、腹痛が短時間で急に出るケースも少なくありません。年末年始は、暴飲暴食による負担と感染症のリスクが重なる、胃腸にとって要注意の時期といえます。

こんな症状は要注意|胃もたれ・胸やけ・下痢・便秘のセルフチェック

年末年始の胃腸トラブルの多くは、数日で自然に軽くなりますが、なかには病気が隠れていることもあります。

次のような症状がないかセルフチェックしてみましょう。

  • 胃もたれや胸やけが続いている
  • みぞおちのあたりに痛みや重さがある
  • 食欲が落ち、食べる量が明らかに減っている
  • 下痢や軟便が何日も続く
  • 下痢と便秘をくり返している
  • 便秘が悪化し、お腹の張りや苦しさが強い
  • 黒いタール状の便が出る、または赤い血が混じった便が出る
  • 強い腹痛や発熱、嘔吐を伴う

このような症状がある場合、「年末だから疲れているだけ」と自己判断するのは危険なことがあります。胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、感染性胃腸炎、大腸の病気などが背景にある可能性もあり、早めに内科・消化器内科を受診した方が安心です。

自宅でできる症状の整理と観察ポイント

受診の目安を考えるうえで、症状を整理しておくことが役立ちます。次のポイントを意識して、メモに残しておくとよいでしょう。

  • 症状が出始めた時期(いつから続いているか)
  • 症状の頻度(毎日か、ときどきか)
  • 食事や飲酒との関係(食べると悪化するか、空腹時に強いか)
  • 発熱、体重減少、強いだるさなど全身症状の有無
  • 市販薬を飲んだときに、どの程度改善するか

特に、黒い便(タール状の便)や鮮やかな血便、我慢できない強い腹痛、ぐったりするほどの脱水症状(尿が少ない、口が渇く、めまいなど)がある場合は、自宅で様子を見る段階を越えている可能性があります。迷わず医療機関に相談しましょう。

胃もたれ・下痢・甘いもの食べ過ぎ…|よくあるケース別原因とリスク

甘いもの・脂っこい料理・アルコールで起こる胃もたれ

ケーキ、揚げ物、焼肉など、脂質や糖分の多い食事は消化に時間がかかります。そこにアルコールが加わると、胃の動きがさらに遅くなり、胃もたれや膨満感、胸やけが生じやすくなります。
アルコール自体が胃の粘膜を刺激して炎症を起こすこともあり、度重なる飲み過ぎは胃炎や胃潰瘍の原因となります。

また、アルコールは食道と胃の境目の働きを弱めるため、胃酸が逆流しやすくなり、逆流性食道炎の一因にもなります。
飲酒量が多い状態が続くと、胃腸だけでなく肝臓や膵臓にも負担がかかり、脂肪肝や肝機能障害、膵炎などのリスクも高まります。年末年始だけとはいえ、「連日の深酒」には注意が必要です。

食べ過ぎ・飲み過ぎで起こる下痢・胃腸炎・便秘

冷たい飲み物を大量に飲んだり、一度に多量の食事をとったりすると、腸の動きが急に変化し、下痢につながることがあります。暴飲暴食の翌日に水のような下痢が続く場合、単なる消化不良であることもあれば、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎や食中毒が隠れていることもあります。

特に冬場は、ノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎、食中毒が増えることが知られており、嘔吐と下痢が短時間に何度も起こることがあります。同じ食事をとった家族や同僚にも症状が出ている場合は、集団発生の可能性も考えられます。

一方で、会食や外食が増える時期は、水分や食物繊維の摂取が不足しやすく、便秘が悪化する方もいます。トイレに行きにくい状況が続くと、便意を我慢することが増え、腸の動きが鈍くなる悪循環に陥ることもあります。便秘と下痢をくり返す場合は、
過敏性腸症候群など別の病気が隠れていることもあるため注意が必要です。

ストレス・自律神経の乱れによる胃腸不調にも注意

年末は仕事の締め切り、行事続き、家族の用事などで、心身ともに落ち着きにくい時期です。このようなストレスは、自律神経のバランスを乱し、胃の動きや胃酸の分泌、腸のリズムに影響を与えます。

その結果、検査で大きな異常が見つからないにもかかわらず、胃痛、胸やけ、吐き気、下痢や便秘、お腹の張りといった症状が出ることがあります。過敏性腸症候群など、ストレスと関連の深い病気が背景にある場合もあり、「気のせい」「ストレスのせい」と片付けず、一度相談してみると原因や対処法が見えてくることがあります。

年末年始にできる!胃腸をいたわるセルフケアと対策

年末年始の胃腸トラブルは、いくつかのセルフケアである程度予防したり、軽くしたりできます。ただし、セルフケアで対応できるのはあくまで軽症の範囲です。強い症状や長引く不調がある場合は、無理せず受診しましょう。

暴飲暴食後のリセットのコツ

暴飲暴食後のリセットのコツ つい食べ過ぎ・飲み過ぎてしまった翌日は、次のような点を意識すると、回復を助けることができます。

  • 食事を抜くのではなく、消化のよい軽めの食事を少量ずつとる
  • 揚げ物、こってりした料理、濃い味付けは控えめにする
  • アルコールは一旦休み、水やお茶でこまめに水分補給をする
  • 夜更かしを控え、しっかり睡眠時間を確保する

極端な断食や自己流の激しいダイエットは、かえって体力を落としたり、胃腸への負担になったりすることがあります。体をいたわりながら、1〜2日かけてゆっくり戻していくイメージが大切です。

胃腸の負担を減らす食事と飲み物の選び方

胃腸を休ませたいときの基本は、「よく噛む」「腹八分目」「温かく消化のよいもの」です。

  • おかゆ、やわらかく煮たうどん
  • 具の少ない味噌汁やスープ
  • 煮込み料理など、やわらかく火の通った食事

こうしたものは、比較的消化に負担をかけにくいとされています。冷たい飲み物や炭酸飲料、強いお酒は胃腸を刺激しやすいため、控えめにしましょう。水や薄めのお茶、カフェインの少ない飲み物をこまめにとると安心です。
便秘が気になる場合は、野菜、海藻、果物、豆類などに含まれる食物繊維や、水分を意識して摂ることも大切です。ただし、急に大量に摂るとお腹の張りにつながることがあるため、自分の体調に合わせて少しずつ増やしていきましょう。

年末年始は、忙しさのあまり「とりあえず市販薬で我慢しよう」と考えがちです。市販の胃腸薬は、一時的な胃もたれや胸やけ、軽い下痢・便秘には役立つ場合がありますが、次のような場合は注意が必要です。

  • 薬を飲んでも症状がなかなか良くならない、すぐにぶり返す
  • 2週間以上、市販薬を飲み続けている
  • 黒い便、血便、強い腹痛、発熱などを伴う

このようなケースでは、市販薬で症状を抑えている間に、もともとの病気が進行してしまうおそれもあります。持病のある方や他の薬を服用している方は、副作用や飲み合わせに注意が必要な場合もあるため、薬剤師やかかりつけ医に相談したうえで使用することが望ましいです。

医療機関を受診すべきタイミングの目安

年末年始は病院やクリニックが混み合うこともあり、「もう少し様子を見よう」と受診を先延ばしにしてしまいがちです。しかし、受診が遅れることで病気が悪化することもあります。

様子を見てもよい症状の目安

  • 軽い胃もたれや胸やけが1〜2日続く程度で、食事はとれている
  • 一時的な下痢や便秘で、強い腹痛や発熱がない
  • 飲み過ぎた翌日の軽い吐き気やだるさ

このような場合は、食事内容の見直しや休養、市販薬などのセルフケアで様子を見てもよいことが多いです。ただし、症状が改善傾向にあるかどうかは、しっかり観察しましょう。

受診を急いだ方がよいサイン

次のような症状がある場合は、早めに内科・消化器内科の受診をおすすめします。

  • 我慢できないほどの強い腹痛
  • 黒いタール状の便、鮮やかな血の混じった便が出る
  • 嘔吐と下痢が続き、水分がほとんどとれない
  • 高熱や強いだるさを伴う
  • 数週間にわたって胃痛や胸やけ、食欲不振が続く
  • 急な体重減少や、 貧血症状(立ちくらみ、息切れなど)がある

これらは、胃潰瘍十二指腸潰瘍、感染性胃腸炎、消化管出血、大腸の病気などが隠れている可能性があり、早めに原因を調べる必要があります。高齢の方や小さなお子さん、持病のある方は、症状が軽く見えても急速に悪化することがあるため、特に注意が必要です。

まとめ|年末年始の胃腸トラブルを回避するために

年末年始は、どうしても食べ過ぎ・飲み過ぎになりやすく、胃腸トラブルが増える季節です。忘年会や新年会を楽しみながらも、

  • 食事とお酒の量やペースを意識する
  • 暴飲暴食のあとには無理のないリセットを心がける
  • 生活リズムや睡眠を整え、ストレスをため込みすぎない

といったセルフケアで、胃腸の負担を軽くすることができます。

一方で胃痛や胸やけ、下痢や便秘が長引いたり、黒い便や血便、強い腹痛や発熱といった気になる症状がある場合は、「そのうちよくなるだろう」と我慢し続けるのではなく、受診の目安と考えて早めに内科・消化器内科を受診してください。
年末年始の忙しい時期こそ、ご自身の体調の変化に目を向けることが大切です。適切なタイミングで医療機関に相談し、必要に応じて検査や治療を受けることで、新しい一年を安心して迎えることにつながります。