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新型コロナウイルス

倦怠感・だるさ喉の痛み発熱・高熱関節痛頭痛鼻水 内科の病気

疾患の概要

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年末に中国・武漢で最初に報告された新しいコロナウイルス(SARS-CoV-2)によって引き起こされる感染症です。
感染力が強く、人から人への飛沫感染や接触感染を介して急速に拡大しました。
世界中でパンデミックを引き起こし、2020年3月には世界保健機関(WHO)によって国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)として宣言されました。
日本を含む多くの国では、医療体制や社会経済活動に大きな影響を与えました。

新型コロナウイルスは、従来の風邪の原因となるコロナウイルスとは異なり、下気道にも感染することで重篤な肺炎を引き起こすことがあります。
特に高齢者、基礎疾患を持つ人、免疫力の低下している人では重症化するリスクが高く、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)による治療を必要とする場合もあります。
致死率はインフルエンザに比べて高く、長期的な後遺症(いわゆる「ロングCOVID」)も報告されています。

感染経路は主に飛沫感染と接触感染です。
ウイルスは感染者の咳、くしゃみ、会話などによって飛散し、これを吸い込むことで感染が成立します。
また、ウイルスが付着した手指を介して粘膜(目、鼻、口)に触れることでも感染します。
密閉、密集、密接の「三密」環境では感染リスクが高まり、クラスターの発生源となることが多くありました。

ワクチンの開発はこれまでに例を見ないスピードで進められ、mRNAワクチンを中心に高い発症予防効果と重症化予防効果が確認されました。
日本でも2021年から本格的に接種が開始され、以降は感染者数や重症者数、死亡者数の抑制に貢献しています。
現在はオミクロン株などの変異株に対応した改良型ワクチンが利用されています。

さらに、ウイルスの変異によって症状や感染力の傾向が変化するため、流行の波に応じた柔軟な対応が常に求められてきました。
政府や自治体による感染対策ガイドラインの発出、医療提供体制の確保、社会的行動制限の実施と解除など、感染状況に応じて繰り返し対応が変化してきたことも特徴のひとつです。
2023年以降は感染症法上の位置付けが見直され、徐々に日常生活との共存に向けた社会体制が整えられつつありますが、今後も新たな変異株の出現や感染再拡大に備えた監視体制の維持が重要です。

症状

新型コロナウイルス感染症の症状は非常に多様であり、無症状から重篤な肺炎、さらには死に至るケースまであります。
典型的な症状としては、発熱、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、筋肉痛、関節痛、鼻水、鼻づまり、味覚・嗅覚障害などが挙げられます。
初期には軽い風邪のような症状のみで経過することも多く、インフルエンザや風邪との区別が難しいことがあります。

感染初期の1週間ほどは、発熱や喉の痛みといった上気道症状が中心で、軽症で経過することが多いですが、一部の患者では、症状が出始めてから5〜7日後に急速に悪化し、呼吸困難や低酸素血症、肺炎の進行などがみられることがあります。
特に高齢者や持病のある人では、この二相性の病状進行に注意が必要です。

また、新型コロナウイルスの特徴的な症状として、突然の味覚・嗅覚障害が挙げられます。
これは他の風邪ウイルスではあまりみられない症状で、COVID-19の診断の手がかりとなることがあります。
これらの症状は数日から数週間で自然に改善することもありますが、長期間続くこともあります。


重症化した場合には肺炎が悪化し、酸素投与が必要になることがあります。
さらに重症例ではARDS(急性呼吸窮迫症候群)に至り、ICUでの集中治療が必要になることもあります。
また、心筋炎、血栓症、脳梗塞などの合併症が発生することもあり、全身性の炎症反応が引き金となって多臓器不全に至ることもあります。

回復後も、長期間にわたって倦怠感、呼吸困難、集中力低下、記憶障害などの症状が残るロングCOVID(長期後遺症)が問題となっており、若年層や軽症者でも報告されています。

原因

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、ベータコロナウイルス属に分類される一本鎖RNAウイルスであり、コウモリなどを自然宿主とし、何らかの中間宿主を介してヒトへと感染が拡大したと考えられています。
感染力が非常に強く、従来のインフルエンザウイルスよりも効率的に人から人へと伝播します。

SARS-CoV-2は、ヒトのACE2(アンジオテンシン変換酵素2)という受容体に結合して細胞内に侵入します。
ACE2は主に肺、腸、腎臓、心臓などの細胞表面に多く存在し、これらの臓器がウイルスの攻撃を受けやすいことが、COVID-19の多彩な症状の原因とされています。
ACE2の分布により、肺炎だけでなく、心血管系や消化器系、神経系への影響も引き起こされます。

ウイルスは上気道で増殖し、飛沫やエアロゾルを通じて周囲に拡散します。
感染初期にはウイルス量が多く、症状が出る前でも他人に感染させる可能性があるため、無症状者からの感染が拡大を助長しました。
変異株はウイルス表面のスパイクタンパク質に変異を持ち、感染性や免疫逃避の性質が変わることがあります。

パンデミック初期には武漢型、次いでアルファ、デルタ、オミクロンといった変異株が次々と出現し、それぞれに応じた感染性や重症度、ワクチンの効果も異なることが確認されています。
特にオミクロン株は感染力が非常に高く、軽症例が多い一方で、高齢者では依然として重症化リスクがあります。

また、ワクチン接種によって重症化や死亡のリスクは大幅に減少しますが、免疫が時間とともに低下することや、変異株に対する中和抗体の効果が完全でないことから、ブースター接種(追加接種)が必要とされる場合もあります。

治療

新型コロナウイルス感染症の治療は、症状の重症度やリスク因子の有無に応じて段階的に行われます。
軽症例では自宅療養が基本であり、解熱薬や鎮咳薬などを用いた対症療法が中心となります。
体温や酸素飽和度の自己管理を行い、症状が悪化した場合には速やかに医療機関と連携を取ることが重要です。

中等症以上では入院管理が必要となり、酸素吸入や点滴治療、ステロイド薬(デキサメタゾン)や抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビルなど)、免疫調節薬(トシリズマブなど)が使用されることがあります。
特に酸素投与が必要な症例では、早期の薬剤介入により重症化のリスクを下げることが確認されています。

重症例では集中治療室(ICU)での管理が必要となり、人工呼吸器やECMOなどの高度な生命維持装置が使用されます。
感染症対策と同時に、血栓症の予防や多臓器不全への対応も求められ、総合的な医療体制が不可欠です。

治療選択は、年齢、基礎疾患、免疫状態、ワクチン接種歴、発症からの時間などを総合的に評価して決定されます。
近年では経口抗ウイルス薬の導入により、外来での治療オプションも増えており、早期の受診と診断が治療成績を左右します。

早期発見のポイント

新型コロナウイルスの早期発見には、症状の有無にかかわらず、感染の可能性がある場面にいた人が検査を受けることが重要です。
発熱、喉の痛み、咳、倦怠感などの風邪症状が出た時点で、まずは自己隔離を行い、医療機関や検査センターに連絡してPCR検査または抗原検査を受けることが求められます。

濃厚接触者と判明した場合には、症状が出ていなくても一定期間は検査と健康観察を継続する必要があります。
検査は発症から一定期間以内に行うことで精度が高くなり、早期の診断と治療介入につながります。
無症状であってもウイルスを排出している可能性があるため、早めの対応が感染拡大の防止に効果的です。

また、感染拡大期やリスクの高い施設・職場においては、定期的なスクリーニング検査が推奨されることがあります。
社会的な接触機会が多い人や、高齢者・基礎疾患を持つ家族と接する機会がある人は、より積極的な検査・予防策を講じることが求められます。

予防

新型コロナウイルス感染症の予防には、基本的な感染対策を徹底することが最も重要です。
まず、マスクの着用は飛沫感染の防止に有効であり、特に屋内や人が密集する場では常に着用することが推奨されます。
マスクは鼻と口を確実に覆い、隙間なく装着することが効果を高めます。

手洗いも感染予防の基本です。
石けんと流水によるこまめな手洗いを心がけ、外出先からの帰宅後、トイレの後、食事前などには特に注意が必要です。
アルコール手指消毒剤も補助的に用いることで、手指に付着したウイルスを不活化させることができます。

3密(密閉・密集・密接)を避けることも引き続き重要です。
換気の悪い空間や人が密集する場所では、エアロゾル感染のリスクが高まるため、こまめな換気と人数制限が有効な対策となります。
外出先では手すりやドアノブなど不特定多数が触れる場所への接触を最小限に抑えましょう。

最も効果的な予防法のひとつがワクチン接種です。
ワクチンは感染そのものを完全に防ぐものではありませんが、発症や重症化、死亡を高率に防ぐことが明らかになっており、社会全体の感染拡大防止にもつながります。
定期的な追加接種(ブースター)により免疫を維持することが推奨されます。

リスクの有無に関わらず、体調に異変を感じたら早めに受診し、医師に相談しましょう。