ノロウイルスとは?症状・潜伏期間・感染経路・原因・検査方法まで徹底解説
ノロウイルスの症状や潜伏期間、感染経路、原因、検査方法、そして予防や家庭での対応について解説します。

冬になるとニュースや学校からの注意喚起でよく耳にする「ノロウイルス」。誰でも感染する可能性があり、毎年多くの集団感染が報告されています。強い吐き気や下痢を伴うため生活に支障をきたし、乳幼児や高齢者では重症化することもあります。
ノロウイルスとは?
ノロウイルスは、人の小腸で増殖するウイルスで、急性胃腸炎を引き起こす原因のひとつです。1968年、アメリカのオハイオ州ノーウォーク市で発生した集団感染を契機に発見され、当初は「ノーウォークウイルス」と呼ばれていました。感染力が非常に強く、わずか数十個のウイルス粒子でも発症するのが特徴です。特に冬場に流行が多いものの、一年を通して発生することがあります。
ノロウイルスの症状|潜伏期間
主な症状は以下の通りです。
- 吐き気や嘔吐
- 水様性の下痢
- 腹痛
- 発熱(多くは軽度で37〜38度程度)
症状は突然始まることが多く、強い嘔吐や下痢によって脱水を起こすことがあります。特に乳幼児や高齢者では、体内の水分バランスが崩れやすく、点滴治療が必要になる場合もあります。通常は1〜3日で症状が治まりますが、体力が落ちている方では回復まで時間がかかることもあります。
潜伏期間
ノロウイルスに感染してから症状が出るまでの潜伏期間は、一般的に24〜48時間程度です。感染から1日後に発症するケースもあれば、2日以上経ってから症状が現れる場合もあります。発症のタイミングに幅があるため、感染源を特定するのが難しいこともあります。
ノロウイルスの感染経路

ノロウイルスは非常に感染力が強く、以下のような経路で人から人へ広がります。
- 食べ物を介した感染
汚染された二枚貝(特にカキなど)を十分に加熱せずに食べることで感染することがあります。 - 人から人への接触感染
感染者の嘔吐物や便に触れた手で食品を扱い、そこから口に入ることで感染が拡大します。家庭や学校、介護施設などでの集団感染の多くがこの経路です。 - 飛沫や空気感染
嘔吐物が飛び散ったり、乾燥して舞い上がった微粒子を吸い込むことで感染することがあります。特に処理が不十分な場合に広がりやすいです。 - 環境を介した感染
ドアノブ、蛇口、手すりなどに付着したウイルスを介して感染することもあります。ノロウイルスは環境中でも長時間生存できるため注意が必要です。
ノロウイルスの原因
ノロウイルスによる食中毒の主な原因は、牡蠣をはじめとした二枚貝です。養殖の過程で海水がウイルスに汚染されると、体内にウイルスを蓄積してしまいます。また、調理を担当する人が感染している場合、手指や調理器具を介して食品が汚染され、広範囲に感染が広がることもあります。さらに、ノロウイルスは熱や乾燥に強く、アルコール消毒では死滅しにくいため、感染力が持続しやすい点も特徴です。
ノロウイルスの検査方法
ノロウイルスの診断は、症状や流行状況から臨床的に行われることが多いですが、検査で確認することも可能です。
- 抗原検査(迅速検査)
便を用いて15〜30分ほどで結果が出る簡便な方法です。外来でも実施されやすい検査ですが、ウイルス量が少ないと陰性になる場合があります。 - 遺伝子検査(RT-PCR法など)
ウイルスの遺伝子を調べる方法で、感度が高く信頼性もあります。食品衛生や集団感染の調査、就業制限解除のための陰性証明などに用いられることがあります。
ただし、一般的な診療では必ずしも検査が行われるわけではなく、症状や周囲の発生状況から判断し、治療は主に脱水予防などの対症療法となります。
ノロウイルスの予防法|家庭での対応
ノロウイルスは強い感染力を持つため、徹底した予防が重要です。
- 手洗いを徹底する
石けんと流水で20秒以上、特に調理前・食事前・トイレ後は必ず行うことが大切です。アルコール消毒は効きにくいため、手洗いが基本です。 - 食品を十分に加熱する
牡蠣などの二枚貝は中心温度85〜90℃で90秒以上加熱することが推奨されています。 - 調理器具の消毒
まな板や包丁は洗浄後、次亜塩素酸ナトリウムで消毒すると効果的です。 - 汚物処理の徹底
嘔吐物や便には大量のウイルスが含まれるため、使い捨て手袋とマスクを着用して処理し、周囲を次亜塩素酸ナトリウムで拭き取ることが大切です。
家庭での対応
家庭でノロウイルスが疑われる場合、次のような対応が必要です。
- 水分補給をこまめに行う
下痢や嘔吐で失われる水分を補うため、経口補水液やスープなどを少量ずつ摂ることが望ましいです。 - 食事は消化に良いものを選ぶ
回復期にはおかゆやうどん、スープなど胃腸にやさしい食品を摂ると良いでしょう。 - 安静にして回復を待つ
特効薬はなく、基本的には安静と水分補給で回復を待ちます。 - 二次感染を防ぐ
家族に感染を広げないために、患者と共用のタオルを避け、衣類や寝具は十分に洗濯・乾燥させましょう。 - 受診の目安
嘔吐や下痢が続いて水分が摂れない場合、尿が出ない、ぐったりしている場合は医療機関を受診してください。特に乳幼児や高齢者では早めの受診が重要です。
まとめ
ノロウイルスは冬に流行しやすく、強い嘔吐や下痢を引き起こす感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)の原因です。潜伏期間は24〜48時間で、食べ物や人から人への接触、環境を介して感染が広がります。原因の多くは二枚貝や調理中の二次汚染であり、予防には正しい手洗い、食品の十分な加熱、環境の消毒が欠かせません。家庭で感染した場合は水分補給と安静が基本であり、重症化が疑われる場合は速やかに医療機関を受診してください。
ノロウイルスは誰にでも起こり得る身近な感染症ですが、日常の衛生習慣を守ることで大きく予防することが可能です。もし強い症状や脱水が見られるときは、自己判断せず早めに消化器内科や内科を受診し、適切な治療とサポートを受けるようにしましょう。
